30 / 209

第30話 甘い蜜

「…ァ…ッ!」 自分でもよく分からない感情に駆られて、急ぎ足で宿屋へと向かった。アサに説明をする時間さえも勿体なく感じ、無言で手を引いて連れてきてしまったことに気が付いたときには、すでに部屋の中にいた。 扉を背後で閉じ、アサを座らせたベッドは一人用の自室のベッドより少し大きめだ。両側にはお揃いのチェストが置いてありガラス細工のランプがキラキラと輝いている。 ――落ち着け 怖がらせたいわけじゃない。アサの顔を覗けば、興奮に頬を赤く染め、俺だけが欲に魘されているわけではないことは分かる。でも、俺がしようとしていることは、すべきことなのだろうか。 この子をこの様に求めて良いものなのだろうか。アサは何が起きているか分かっているだろうか。自分の中に少しだけ残っている理性というものが、何をしているんだと問いただしてくる。 それでも、目の前のアサが美しく頬を火照らしながら唇を求めてくるから……止まることを知らない自分の欲が暴走し始めるのを感じた。 後頭部を支えながらゆっくりと押し倒すと、細い腕が首にしっかりと巻き付いてきた。アサの瞳は窓から漏れる陽射しで、いつもより明るく茶色に輝いていき、心ばかり濡れる瞼を縁取る睫毛はしっとりと濡れ震えている。 溺れるように流されながら、乱暴はしたくないと頭の中で自分の理性が叫ぶが、合わせた唇は止まらなかった。薄く小さな唇を吸い付くように味わうと、胸の下で小さな身体が身じろぐ。 端から端までゆっくりと舐めると、閉ざされていた唇が恐る恐ると開いていった。差し入れた舌は、興奮している自分が驚くほど、丁寧に優しくアサの咥内を動いていく。舌の先端を合わせるとビクッと肩が揺れ力が抜けていく。 息を吸い込むタイミングを失ったアサは、喉をゴクリと動かし咥内に余った唾液を飲み込むと、小さな力を込めて俺の肩を押した。 「ッ…ハゥ…二、ルッ」

ともだちにシェアしよう!