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第42話 可愛い子猫

「『秘密』はな…」 しっと唇に人差し指を添え、胸に手を当てると、大きく目を開いたアサが首を傾げた。 アサの胸に添えた手から、トクトクと鼓動が伝わる。 「ヒ、ミツ…」 うんうんと頷き、俺の目を見つめるアサの頬は紅さを増した。目にかかるまで伸びた黒く美しい髪に頬の色が映えている。 ショーンとケンにさえ、この可愛い顔を見せたくない。もっと触れていたいのに、お邪魔虫が二匹もいてもどかしい。 「お言葉ですが、ニール。これは私の思っている通りのことが起きたと推測してよろしいでしょうか」 「恐ろしい推測だが、そう言うことだ」 「えっ、ちょっと、待って、僕にも教えて!」 「お前には秘密だって言っただろう?」 「なっ、えっ、2人の秘密じゃなかったの?ショーンも知ってたら、僕だけ仲間外れ!」 「アサに聞け」 「えっそんなー!アサッ、何が秘密なの僕も知りたい!」 「ンッ???」 未だに握られた手を時々握りしめながら、ニコニコと微笑むアサは、騒々しさを楽しんでいるようだ。 ケンの手で配られた朝食は、現地の野菜を使ったオムレツだった。なぜかほうれん草が多めに入っていたが、フワフワと軽く、新鮮な野菜の味が口に広がる。 「これを食ったら俺たちは仕立て屋に行く予定だ。お前らはどうするんだ?」 「僕たちも行く!」 「お供させていただきます」 横目にアサの顔を見れば、もぐもぐと小さな口を動かして朝食を楽しむ様子に心が温まる。小動物のように可愛く食べる人間なんてこの子以外いないに違いない。 「アサはどんな服を作ってもらったの?」 「毎日着れるような服だ。上下セットで数着、色違い。あとは靴下とソックベルト」 「それは…ご自分の趣味で選ばれたのですか?」 「俺の?ああ、違うとは言い切れないな」 「アサは何着てもかーわいいもんねええ!」 「ボ、ク?」 「ああ、お前は可愛いな」 「これは…今までに増して猫可愛がりに拍車がかかりましたね…」 「はっ、まあせいぜいお前も頑張れよ、ショーン」 「っ!余計なお世話です!」 「何なーに?何のこと!?また秘密なの?」 「ネ…コ…」 いつもの同じメンツだが、いつもとは違う風景。 今日の朝食はいつも以上に華やかだった。

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