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第43話 アサの朝食

   朝ご飯を持って僕たちが泊まる宿に遊びに来たケンは、いつも通り元気いっぱいだ。  ふわふわの卵焼きのような料理は「オムレツ」って言うらしい。ほうれん草に似た緑の葉っぱがたくさん入っていたけど、やっぱりケンはお料理上手。すごく美味しくてお腹も心もぽかぽかした。  ニールと昨夜したことは僕の中では大人がすること。やってはいけないことをしてしまったような、不思議な罪悪感に駆られたけど、でも、だって、ニールだから、ニールにだけ、こういうことをやられてもダメって言えなくて。  何でかとか、理由は説明できないんだけど、ニールのことが好きだから、肌に触れられるたびにドキドキしちゃうし、ニールが僕の中に入ってきた時なんて…  あっ!そんなことばっか考えてると顔が真っ赤になっちゃう…  今朝だって、ぎゅって手を握られただけで、頬がポカポカして体も熱くなったんだ。  三人がお話してるのを眺めてると楽しそうだなって思う。僕も言いたいことが沢山あるし、聞きたいことだって沢山ある。  毎日ニールとケンが言葉を教えてくれるから頑張って練習してるけど、会話ができるようになるには何年もかかっちゃうんじゃないかなあ。 「行くぞ、アサ」  僕の手よりずっと大きくて頑丈な手が背中を擦る。ゆっくりと上下する指は優しくて心まで温かくなる。 「アサッ!早くはやく〜!」  もうドアノブに手をかけたケンはニコニコ笑ってぴょんぴょん跳ねている。  今日はどこに行くんだろう?  そんなことだって僕はまだ簡単に質問できない。船を降りてここには3日間泊まるんだって言うのはニールがゆっくり教えてくれたから分かってる。  立ち上がると僕の背中は温かい体温に支えられた。背後からスルリと僕の頬を撫でるニールの指はちょっと冷たくて、火照った肌にちょうどいい。  コツンとニールの顎が頭に添えられた。すごく背が高いニールに包まれると小さな僕はすっぽりと埋まってしまう。  ニールやショーンほど大きくなるとは思わないけど、僕だってまだ成長期なはず!  ふと顔を上げるとケンが何かを叫んでいる。なんだか分からないけどもうそろそろ出発したほうがよさそうだ。  《ケンが叫んでいたこと》 「ちょっと!ニール?なんでアサにハグしてんの?僕もやる〜!」 「はっ?!お前は先に行けっ」 「っ!僕の扱いひどくない?ショーンー、ニールがいーじーめーるー!」 「ケン、我々は先に出ていましょう」 「え?なんで?」 「手を」 「ん?手ぇ繋ぐの?」 「嫌ですか?」 「い、嫌じゃないよっっ」

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