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第88話 ケンの仕事の話

「で?」 「仕事をさぼってる人間の態度ですか、それは」 「ねえねえ、何で二人喧嘩してんの!」 「ケン、ニールは仕事をさぼってアサとングッ!」  何かを言おうとしたショーンの口をニールが片手で塞いだ。眉間にしわを寄せたショーンはすこく怖い顔をしてニールを睨んでる。喧嘩してる場合じゃないのに。アサの仕事の話しなきゃだし、それにニールは仕事に戻らなきゃじゃないの? 「アサはもう大丈夫なの!??????」 「ン、ダイジョブ…」 「そうならいいの!もしなんかされたらね、僕にぜーーーーったいに言ってよね!」 「ン???」 「ニールなんてやっつけてあげるからね!!」  ぎゅーってアサを抱きしめたらちょっと体温が高い気がした。あれ…?風邪をひいてるのかなぁ… 「アサ、熱?」 「ネ、ツ…?」 「うん!具合悪い??」 「ボ、ク……?」  コテンって首を掲げたアサはすっごく可愛いんだ。真っ黒の髪がさらさら~って揺れてきれいな瞳がちょっと困ったなぁって感じにこっちを見つめるの。もちろん、本当に困らせたりはしないよ。ただ、そういう表情をしてるとぎゅーーーーってしたくなるんだ。 「ねえ、ニール、仕事さぼってんの?」 「はぁ?ケン、お前にはそれ言われたくないな」 「でもさぼってるんでしょ?今仕事してない」 「っ、日誌を取りに来ただけだ。今すぐ戻る」 「そーしたほうがいいよ!船長怒ると怖いの知ってるでしょ?」 「…それは分かってる。あの人ネチネチうるさいんだよな…」 「じゃあ、バイバイねー」 「ひでーな、お前」  僕たち、何年も同じ船で一緒に仕事をしてるから、いつもは優しい船長が怒るとどれだけ怖いかって分かってるんだ。だから、ここでのんびりしてたらニールはすごく怒られちゃうはずだ。 「アサ、ごめん、俺は仕事に戻るからな」 「ン、イ、テラシャイ」  パパっと慌てながら身なりを直したニールはアサの額に唇を落として部屋を去った。  知ってるんだ。僕。おでこにチューは特別なんだ。ショーンも時々僕にするんだけど「特別ですよ」って絶対言うの。  何がどう特別かは僕、知らないんだけどね。特別っていい響きだよね。  お父さんとお母さんがいたら僕におでこチューしてくれてたのかも。って時々考えるんだ。でも、いないものはしょうがないよね。今はショーンのおでこチューが僕の「特別」だもん。 「ケン、アサの仕事の話はニールがいるところで話したほうが良かったのではないですか?」 「あ、そうか!!!どうしよ、でもしょうがないよね。仕事だし。船長怒ったら怖いもん!」 「ニールが機嫌を損ねても理解してもらうしかないですね」 「大丈夫だよ、一生のお別れじゃないし。それに同じ船の上だよ?だいじょーーーーぶ!」  未だにベッドの上にちょこんって座ってるアサは、僕たちを見つめて不思議そうな顔をしていた。  よし!仕事の話をするぞおおお!!!!!

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