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第100話 ケンはお熱
んー……なんでだろう。熱って、熱だって自覚した瞬間にいきなりひどくならない?さっきまで談話室でわいわいしてたはずなのに、部屋に戻ってきたら体が信じられないくらい痛くなってきたんだけど!
「うー……」
「ケ、ン?」
「アサ……?」
「ダイジョブ?」
「んー……」
大丈夫、なのかな。頭がほわほわして何も考えられないんだ。しかもなぜか体が重い!
だけどね、僕の手を握るアサの手が冷たくて気持ちいい。大丈夫だよ、元気だよー!って言いたいのに、舌が上手く回らないよ。
「ケン、今日くらい静かにしとけよ?」
「せん、ちょ?」
「ああ、見舞いに来た」
「ん?なんて?」
あれ?何で船長まで僕の部屋にいるんだ?あれあれ?なんか悪いことしたっけ。
えっとー、厨房のモップ掛けはちゃんとしたでしょ。床に置きっぱなしだったじゃが芋の袋は棚に戻したし、水漏れしてた水道は直してもらったし……
怒りに来たのかな……
部屋の天井がぐるぐると回り始めて、周りの声が遠くなっていって僕は、眠ってしまったみたい。
って言うのも、次に目を開いたら船長も、アサもニールも部屋にいなくて、静かになった部屋の片隅にある椅子にショーンが座って本を読んでいたんだ。
未だに熱いのと寒いのが同時に起きてる感じするけど、さっきみたいに汗だらだらって感じじゃない。静かにページをめくる姿を僕はぼーっと見つめていた。
座っているだけで絵になる、ってこういうことなのかなって、ちょっと賢そうなことを思ってみたりもしたんだ(すごいでしょ?)。
「目、覚めましたか?」
「うん……体が痛い……」
「無理に起き上がらなくて大丈夫ですよ。水、飲めますか?」
「み、ず……んわぁぁ頭もいたいいいいいいいい……」
起き上がろうとしたらね、ぐわんぐわんって頭が痛くなって、耐えられなくて僕はまた横になった。こんなに具合が悪くなったことなんて生まれて初めてかもしれない!
あれ?小さい子ころに風邪ひいたことって……あったかなあ、今は何にも思い出せないや。
「夕飯はどうされますか?」
「食べたくない……」
「それは、珍しいですね」
「しごと、」
「今日はお休みになりました」
「ん……」
ベッドに腰掛けて僕の前髪を撫でたショーンはちょっと疲れ顔だ。
ここにいないで、部屋で休んでればいいのに。
「ずっと、ここにいたの?」
「ええ、看病をしようと」
「かんびょう」
「上手くいかなかったのですが」
ぎこちなく笑ったショーンは悲しそうだった。
なんでだろう。
あ、そうだ、ありがとうって言わなきゃ。
「ショーン、ありがとう」
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