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第150話 ケンはうるさい
伝わるかが問題だけどさ。
「これがアサで、これが僕ね?」
「コレ……?」
「そう!棒人形だけど分かるでしょ?ん!そうだ、ほら、こっちがアサだから髪の毛長くして~、僕はこういう感じで~」
「コレ、ボク」
おっ、ここまでは順調じゃない?いつもより時間かかってるけどちょっとずつ進歩してる!分かり合えてる!?
「そう、で、ここで配膳するでしょ?」
「ハイゼン……?」
「はい、ニール、パン、はい、ショーン、シチューって配るとこ」
ジェスチャー付きでご飯を配るふりをすると、ふふって楽しそうに笑いながらアサは頷いてくれた。多分「配膳」の意味は分かってくれたんだ。待って、「配膳」のほうが「最後」より難しそうない?違うの?
「ハイ、ケン、スコォン、ドォゾ」
「もぉぉぉ!アサなんでそんなにかわいいわけ?!ありがとう!ごっこ遊びのスコーンでも僕食べちゃう!!!」
そうだ!ちがう!可愛いんだけど僕たちは遊んでるわけじゃないんだ!これはお勉強の時間!
「これが並んでる船員ね」
「レツ?」
「そう、レツになってる船員。えっと、じゃあこれが、ニール、ショーン、ミリさんってことにしよ?」
「コレ、ニール?」
「そう、一番最初のがニールね。そうすると最後がミリさんになるでしょ」
ええい伝われええええ!
ここで忘れちゃいけないのが、僕はニールのもとにすぐに帰る予定だったアサをちょっと”お借り”してるってこと。だからね、楽しいんだけどね、あんまり長引きすぎると落ちてくるゲンコツの数と力が増しましになりそうで……ああ、ニール、パニクってるかなーそれはそれで面白いけど、僕に被害が来なければの話。でも今回は僕のせいだよなあああ。
「ミリサン、サイゴ?」
「そう!ニールが一番でミリさんが最後!」
「ン!サイゴ!」
おおお?!これは期待しちゃっていいのかな。
ベッドに座る僕たちの間に置いてあったスケッチブックを手に取ると、アサは黙々と何かを描き出した。
「何描いてるの?」
「……ネコ」
「ネコちゃあああああああああああん!」
んって恥ずかしそうにページを見せてくれたアサの手元に目を向けると5匹のネコちゃんが!これは大傑作。芸術品。最高すぎる。ちっちゃくてまん丸くてふわふわで尻尾がゆらゆらしてるネコちゃんが5匹ぃぃ!!!
「ああああああああ、かわいいいいいいいいい!」
「ケン、ウルサイ」
「ごめんんんん!で、これが?」
「コレ、ネコ」
「うんうん!見て分かるよぉ!アサ絵が上手!」
1、2、3、4ってアサがネコちゃんに指さして数えていく。
「コレ、サイゴ、ネコ」
「あたり!そう!それが最後のネコ!」
「サイゴ!ワカッタ!」
わああああ!アサがレベルアップしたよ~!これはお祝いだねえええ!
「ワッ、ケン、アブナイ!」
「ん~大丈夫大丈夫、マットレス柔らかいから~」
「ギュ、スル?」
「するするぅぅ!」
アサが言葉をまた一つ覚えた祝い、もとい、僕が言葉を教えることに成功した祝いと称して、僕はアサに盛大なハグをしてベッドにころんと転がった。
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