184 / 209

第184話 アサのいけないこと

「ンッ、ンッ」  恥ずかしいからやめたいのに、一度動かし始めた手は止まらない。ここがいつもの船室ではなくて、病室であって、どう考えても”いけないこと”をしているってことは分かっている。分かっているんだけど、それも相まって、余計体が熱くなっている気がした。  誰か来ちゃったらどうしよう…… 「アサ、くち」  見せつけるように両脚を大きく開いた僕の顎を大好きな人の指が掬う。ニールの太ももの間に座る僕は、びくびくと背中を震わせながら促されるままに目を閉じて唇を差し出した。僕はこんなことができるほど、大胆な人間じゃなかったはず!って頭の隅で、理性が叫んでいるけど。熱くて厭らしく動く舌が口の中を動き始めると、何もかもがどうでも良くなってしまうくらい、僕は欲に素直になってしまう。 「ハゥ、アンッ」  熱い舌が口内を這いまわり、思考が回らなくなってきた僕の太ももをニールの手が撫で上げる。口づけの合間合間に勝手に口からもれてくる自分の声は情欲に濡れている。この部屋の近くに誰かが来たら、きっと何をしているかばれてしまう。 「いい子だ、アサ。気持ちいいな?」 「ンッ、ニールッ」  離れていった唇が僕の頬に触れ、耳たぶをかすめた。そのままささやかれた言葉は、脳の中に直接響く。首、肩、喉と、至近距離で僕の手がいじる場所を見つめながら、ニールは僕の体に唇を寄せていく。たまに、チクリチクリと肌が痛み、それを癒すかのようにニールが舐めていった。  自分が自分に与えている快感で頭が馬鹿になったみたい。段々この痛みでさえ気持ち良く感じてきているんだもの。    自分で自分のモノを扱いているってことは、いつもより少しは積極的に動いているってことなのかな。  だって、いつもは自分たちの部屋でこういうことするし、僕はほとんど何もできないまま、ニールが全部してくれる。僕だって、ニールにお返ししたいけど、口づけだけでもいっぱいいっぱいなってしまうから。  それにニールが僕に入ってくるともう何が何だか分からなくなるんだ。だから、大体僕はされるがままに横たわっているだけ。受け身すぎるんだ。  あ……たまにニールの上に座ってたり、壁に背中つけて立っていたりするけど……それもちょっと難易度が高いから、自分からはできないことだけど。  「かわいいな、アサ。ああ、ここもこんなになってる」 「ン!?ゥ…ダメェ」 「ダメじゃないだろ?美味しそうなのに」  胸の頂をニールの舌が弄る。くにくにと遊ばれ、口の中へと消えていったそれは彼に出会うまで、存在している意味が全くなかったもので。吸われたり舐められたり、たまに甘噛みされたりを繰り返されると、腰の奥がしびれてくる。 「ニール……ダメ、ボク、ダメ」  上下に扱きだして何度目か分からない。恋人に触れられ、見つめられ、気持ち良いのは気持ち良いのだけど、なかなか絶頂に達することができない。それどころか、いつまでもその感覚が訪れないことに僕は、辛ささえ感じ始めた。 「ナンデ……ンンゥ……コレ、ダメ」 「自分でやってイケないってことか?」  何て言われたか分からないけど、多分合ってる。合っていなくてもいいから何とかしてほしい。  頭を縦に振った僕は、すんすんと鼻をすすった。泣くような状況じゃないけど、涙が出てきそうだ。  

ともだちにシェアしよう!