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第196話 ニールの新しい仲間
時間はかかったが、アサはケンの宿泊先に泊まることに決まった。始めはケンの言っていることがわからなかったのか、難しい顔をしていたが、その内頬を緩めてニコニコとしだし、その場にいた大人たち(厳密に言えば成人しているケンも大人だが、今は「精神的な面で大人」である俺を含めた4人)がホッと胸をなでおろした。
「よし、じゃあこの件に関しては解決ってことでいいな?」
「うん!アサとお泊り~!」
「あくまでも静かに、ですよ?」
「分かってるってー!」
聞いたところ、ショーンも船長たちもケンと同じ宿に泊まってるらしいから、最悪の事態は起こらないだろう。アサの恋人としては、どんな宿屋なのか見てみたいが、今のところそれは叶わないようだ。
質素なところだが、朝ごはんが美味しいとミリさんは言っていた。この際、アサが安全であればいい。
「そう言えば、セブ。船医候補さんとちゃんと会えたの?」
「ああ、そうだった。ケンのことより、そっちの話のほうが何百倍も重要だな」
「ちょっ!?!?失礼すぎる!」
「まあまあ、これから大事な話をするから静かにしないとね、ケン」
はーい、とミリさんに向かって元気よく手をあげたあたり、ケンは「静かにしないと」って部分を聞き逃してるな。
「お前たちがのんびりと散歩している間に会いに行ってきた。結論から言うと、雇ったぞ」
「おお!?本当にちゃんとした人なの??船長、怪しい人じゃないか確認した?」
「ちゃんとした人って、落ち着きがない人間の代表みたいなお前が言えることじゃねえからな、ケン」
「ちょっと!?最近僕の扱いがひどくなってきてない????」
落ち着いて、とミリさんがケンを宥めるとみんな揃って船長のほうへ視線を向けた。いくら船医が必要だからと言って、気の合わないやつだったら面倒くさい。仕事だから割り切れ、と言われたらそこまでだが、働いていないときだって四六時中同じ船で生活しなくちゃいけないんだ。どうせだったら今の船員たちと仲良くなれる性格の良いやつだったら良いなと願っても贅沢ではないだろう。
「ニールを診てくれた先生の知り合いの息子さんだ。本人も船に乗ることに興味を持っているし、まだ若いがこの街で医者としても尊敬されている。問題はないだろう」
「船長自身が直接お会いになって大丈夫だと思われたんですから、私たちとしてもその方を歓迎するしかないですね」
「僕も、ケンみたいな甘えん坊じゃなければ全然いいよ」
「ミリさん!?僕いつ甘えん坊になったって?ふん!僕も、みんながいいって言うならいいよ。どうせあったら分かることだしね!」
そんなことを言っておきながら、この船医について気になるらしいケンは、船長を質問攻めに合わせていた。
と、言っても、何を聞いても「会えば分かるって言ってんだろ」って返されていたけどな。
「イ、シャ」
「ああ、そうだ、アサ。新しい船員が医者なんだ」
「ウ、ン?イシャ、フネ……ン、ノル?」
控えめに腕を突かれ、視線を向けるとアサがゆっくりと言葉を口にした。
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