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第198話 ミリの予定
「ケン、部屋では静かにね。大騒ぎしたら外で寝ることになるから」
「もぉミリさんったら!分かってるってば!静かに、さっさと寝る!でしょ?」
「心配だなぁ。アサ、ケンを頼むよ?」
「ダイジョブ、ケン、シズ、カ。ヤクソク」
「僕も約束するもーん!」
あの後、面会時間が終わるまで僕たちはずっとニールの病室にいた。何度かワイワイと盛り上がってしまった気がするが、誰も注意しに来なかったから、きっとうるさすぎたりはしなかったのだろう。
さすがに、病室を去る時間になるとアサが悲しそうな表情をし出したが、聞き分けの良い子、というよりか、アサは他の誰かさんと違って常識のある子だから、ニールにさよならのハグをすると大人しく部屋を出た。残されたニールのほうがおそらく寂しい思いをしているだろうって僕は思う。だって、アサは僕たちと宿まで戻って、ケンと同じ部屋に泊まるわけだからね。ニールがいなくたって楽しいに違いない。
「おい、ミリ、もういいだろ。ケンだって子供じゃねーんだ」
「でも心配なんだもん」
「同じ宿に泊まってんだ、なんかあったら俺たちのとこにも聞こえてくるだろ」
「聞こえてくるのが一番困るんだけどなぁ」
夕飯はショーンも含めみんなで食べた。セブおすすめのお店は、こじんまりとしていたけど味は確かで、居心地も最高だった。なんでも、店主さんの趣味が魚突きらしく、自作の銛を持って早朝に海に出かけて、満足いく魚を捉えられたら、その晩の料理として出すらしい。
料理に関して、難しいことは分からないけど、美味しくておかわりをお願いしたいくらいだった。と、言ってもここ最近はおかわりしてデザートも食べれちゃうほど胃は強くない。若い頃はどんなに食べても胃もたれもなかったし、好きなものを好きなだけ食べて、デザートも追加してたくらいなのにな。年をとってきたってことなのかも。
アサは魚が好物らしくパクパク食べてたし、ケンは料理することが仕事のせいか、使われている香辛料とか調理方法に興味があったみたい。小さい頃は口の周りを汚して、テーブルにも服にもこぼしながら派手に食べるような子だったから、大人になってきてるんだなって少し嬉しくなってきちゃう。
「おい、ケン。明日の朝8時に集合な?ショーンも朝食一緒に食べるか?少し歩くが、海辺に美味しい店があるらしいんだ」
「そうですね、特に予定をたてていたわけではないので私もご一緒します」
「ショーンも来るの!?」
「嫌なんですか?寂しいですね」
「い、イヤじゃないけど!」
出航日までまだ時間がある。もちろん、船のメンテナンスとかやることはあるわけだけど、久しぶりの寄港を楽しまなきゃ損だよね。ここでしか手に入らないお茶とかあったら、絶対買いたいな。うーん、でも一人で買い物に行くって言ったら絶対セブがついてきちゃうし、二人で行こうと言ったら絶対飽きちゃうだろうなぁ。
「じゃあ、決まりだ。ここで8時集合。朝食後にその足でニールのとこに顔出すから、一緒に来たいやつはついてこい。アサは来るよな?」
「アシタ、ニールノ、アウ」
「違うよぉぉぉ!ニール、と、会う!だよ、アサああああ、ああああ、でも可愛いかわいい。かわいいー!」
「ト、アウ?」
「そうそうそうー!ニールと会う、ね」
「おい、俺らはもう行くぞ、ミリ」
「あ、船長もう解散するの?おやすみー!」
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