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第199話 ミリの生理現象

「ここ数日ですごく年を取った気がするな」 「何言ってるの、セブ。まだ若いつもりだったの?」 「お、ミリ、言ってくれるな。俺のこと、じーさんだとでも言いたいのか?」 「ふふ、セブがじーさんだったら、僕もじーさんだね。体が鈍くなってこんなこともできなくなっちゃうかな?」  セブに口づけをすると、それを合図にしたかのように、大きな掌が僕の腰を抱く。何年も何回もやってきたことだから、お互いの動きが息をするようにわかるわけだし、この後何をしようとしているかだって、話し合わなくてもはっきりとわかってしまう。  だからといって、年を重ねても頑丈なままの体に飽きたわけでもなく、自分のものより男らしい掌から与えられる快感に嫌気がさしたわけでもない。優しく動き回る指先は今でも頬を紅潮させてくれるし、セブの言葉は確実に意図をもって僕の耳元にささやかれる。 「んぅ。もうやりたくなっちゃった?悪い子だね、セブは。部屋に戻ってきたばかりなのに」 「始めたのはお前じゃないか?ほら、こんなに硬くしてるのに。誰が悪い子だって?」 「あぁ!」  夕飯後に宿泊先に戻ってきて、みんながそれぞれの部屋に戻っていくのを見送ったあと、僕とセブも自分たちの部屋に戻ってきた。セブの言う通り、年を感じてしまうくらい、ここ数日怒涛の日々が続いていた気がする。ニールの怪我、緊急停泊、入院。考えることもやることもたくさんすぎて、頭が爆発してしまいそうだ。  だから、僕はこのまま大人しく就寝してもよかったんだけど。ほら、疲れていると体が反応しちゃうことだってあるじゃない?特に、好きな人といるときは。わざとじゃないんだよ。勝手にムクムクってしちゃうの。男だからね、生理現象。でしょ? 「セブ、セブ?鍵、閉めた?ちょっと、待って。がっつかないで。逃げないから。お願い、鍵閉めて、カーテンちゃんと閉めてから、しよ?」  うぅぅ、とか唸っちゃって。セブはたまに子供っぽいんだから。  いい大人の、みんなの憧れである船長さんが、はだけた上半身を見せびらかしたまま、一言も言わずにみだらに触れていた僕の体からしぶしぶと離れて、言われた通りに扉とカーテンを閉めに行った。 「いい子」 「ミリ、もう意地悪はやめてくれ。早くしないと、股間が痛くて死ぬ」 「そんな簡単に死んでたら、セブはもうとっくのとうに死んでるでしょ」 「死んでもお前のために何度でも生き返るけどな」 「ほんとに生き返ってきそうで怖い」  部屋に用意されたベッドは、船にある僕たちのベッドと同じくらいのサイズ。寝心地は、もちろん僕たちのベッドのほうが良いんだけど。他のベッドで体を重ねていると不思議といつも以上に盛り上がったりするんだよね。なんでだろう。 「セブ、縛ってほしい?」 「っ!?今、この状態でそんなおいしいこと提案するか?」 「嫌なの?もう勝手に脱いじゃってるけど、そのまま全裸で放置してほしい?」 「いや、それは。それはほんっとうに困るんでお願いします」 「急に敬語なの?ふふ、いきなり腰が低くなっちゃって。いいよ、縛ってあげる。頑張ったセブにご褒美ね」

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