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第203話 セブの小悪魔様

「はぅ、っん、あぁっ!ゃんっ、どうしよ、セブっ、僕もッ、いきそぉッ!」 「あぁ、ミリっ、ぅっ」 「んぅ、ドクドクしてる」 「お前なぁ」  ミリのことを小悪魔だと呼んだやつがいた。 「いっぱい出ちゃったね」  何を言っているんだ、俺の恋人は天使だ、とその時は返したが……目の前で意地悪そうに指を舐めているミリは小悪魔そのものだ。  天使だったら、こんな風に俺を見下ろして誇らしげにほほ笑まないだろうし、俺の腕を縛って嬉しそうに跨ってこないだろう。ミリは純粋無垢な天使ではない。小悪魔だ。一度ハマったら抜けることのできない罠のように誘惑してくる小悪魔様だ。  ほかのやつにもそんな小悪魔な顔を見せてるんじゃないだろうな、とか心配になるが、わざとやってることではなくて、天然なんだな。きっと。歩き方とか、髪をはらう仕草とか、見上げながら首をかしげてくるとことか。出会った時からそうだ。本人の意識関係なく、勝手になんだかフェロモン的なものがフワフワしてんだ、ミリは。 「ミリ、ベルトとってくれ」 「もうとっちゃうの?もったいない」 「このままじゃお前に触れない」 「縛ったままじゃ足りなかった?興奮してくれたと思ったのに」 「したよ。それとこれは別だ。お前に今すぐ触らないと俺は使い物にならなくなる」 「なにそれ」  ふふっと笑うとミリは俺の両手首を束ねていたベルトを緩めた。  自由になった両手で、未だに自分の腰に跨っている恋人の背中を撫でると、艶めかしいため息が耳元で漏れた。   「なんでこんなに気持ちいいんだろうな。触れているだけで悩みとかどうでもよくなってくる。幸せになるエキスが出てるとかじゃないよな?」 「エキス?なにそれ。僕が液漏れしてるみたいじゃない」 「じゃあ、アロマセラピー効果かな。擦れば擦るほど効果が出てくる、みたいな」  たまにバカなこというよね、というとミリは、俺の肩に頭を預けた。  長くて柔らかい髪が肌をくすぐり、不思議と安心感を与えてくれる。他人の体温は、特に恋人の体温は精神安定剤になるのだろうか。 「セブ、お風呂、一緒に入る?」 「もう……終わりか?」  いや、欲張りにも、何回戦かしたいと思っていただなんて、口にしなくてもおそらくミリにはばれているけれど。ミリの顔には「もう寝たい」って書いてあるわけだし、明日も朝から予定があるわけだから、ここは出来る男らしく……! 「お風呂で、やらないとは言ってないでしょ?」 「あ、あ、ああ、そうだな。風呂でな」 「なに動揺してるの?」 「全裸の恋人に風呂でやろうって誘われて動揺しない男がどこにいるんだ!」 「ここにはいないね~。ほら、早くいくよ。明日は早起きなんだから。ちゃんと睡眠時間も確保したいでしょ?」 「はい」 「いい返事っ!先に行って髪洗ってるから、あんま時間かけないでよ」  この宿にはちゃんと浴室がついている。シャワーしかない船生活に慣れると、たまに停泊地で浴槽のついた部屋に巡り合うと、各方面に感謝してしまう。しっかり浸かって体を温められるだけではない。今夜みたいにミリとお楽しみできちゃうことだってあるわけだ。 「すぐ行く」    

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