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ボクの願い~スキです~

 ◆  ボク、三毛(みけ)。  ボクは、ほんの少し前まで人間じゃなかった。  人間になる前のボクは三毛猫。  猫だったんだ。  ボクが猫だった頃のことだ。  夜道を散歩していると、突然やって来た大きなカタマリにはね飛ばされそうになったんだ。  すんでのところで、ある人に助けて貰った。  ある人っていうのは、ボクが大好きな人。  それでボクは神様に、『大好きな人の傍にいたい』ってお願いして、人間にしてもらったの。  ボクが大好きな人は何でも、『ゾク』? とかいうので、大きくて硬いカタマリに乗って、夜を走る。名前は(りゅう)サン。  正直言って目付きは悪いし、いつも怒っているようにも見える。それに肩も広くて胸も分厚くて背が高い。見た目はすごく恐い。でも、すっごく優しい人なのは、助けて貰ったから知っている。 「龍サン、好き~」  龍サンの分厚い胸にほっぺたをスリスリしたら、ちょっぴり乱暴だけど頭をポンポンって撫でてくれる。  そのおっきな手が好きッ。  嬉しくてそのままゴロゴロしてたら、ボクの背中に手が回る。  ギュってしてくれる。  お母さんみたいに優しくて、お父さんみたいに力強い。  ……懐かしい。  お父さんとお母さんが生きていた頃のことを思い出す。  龍サンの傍はとてもあたたかくて、涙が出そうだ。 「龍サン……」  涙で滲んだ世界で龍サンを見上げると、だけど龍サンは慌ててボクを引き剥がす。  そして、いつものように……。 「お前、帰れ」  この一言。  優しくしてくれたと思ったら突き放されて……。

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