7 / 63
ボクの願い~スキです~
◆
ボク、三毛 。
ボクは、ほんの少し前まで人間じゃなかった。
人間になる前のボクは三毛猫。
猫だったんだ。
ボクが猫だった頃のことだ。
夜道を散歩していると、突然やって来た大きなカタマリにはね飛ばされそうになったんだ。
すんでのところで、ある人に助けて貰った。
ある人っていうのは、ボクが大好きな人。
それでボクは神様に、『大好きな人の傍にいたい』ってお願いして、人間にしてもらったの。
ボクが大好きな人は何でも、『ゾク』? とかいうので、大きくて硬いカタマリに乗って、夜を走る。名前は龍 サン。
正直言って目付きは悪いし、いつも怒っているようにも見える。それに肩も広くて胸も分厚くて背が高い。見た目はすごく恐い。でも、すっごく優しい人なのは、助けて貰ったから知っている。
「龍サン、好き~」
龍サンの分厚い胸にほっぺたをスリスリしたら、ちょっぴり乱暴だけど頭をポンポンって撫でてくれる。
そのおっきな手が好きッ。
嬉しくてそのままゴロゴロしてたら、ボクの背中に手が回る。
ギュってしてくれる。
お母さんみたいに優しくて、お父さんみたいに力強い。
……懐かしい。
お父さんとお母さんが生きていた頃のことを思い出す。
龍サンの傍はとてもあたたかくて、涙が出そうだ。
「龍サン……」
涙で滲んだ世界で龍サンを見上げると、だけど龍サンは慌ててボクを引き剥がす。
そして、いつものように……。
「お前、帰れ」
この一言。
優しくしてくれたと思ったら突き放されて……。
ともだちにシェアしよう!