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ボクの願い~春?~

 仲間たちやいつも魚をくれる人間のおばあちゃん。今頃どうしているかな……。  お父さんとお母さんたちのことを思い出し、お布団の上に視線を置いたまま、悲しい気持ちで話した。 「……うそだろ? 他の男に春を売ってたってのか? そういうふうには見えねぇのにな……。いや、この容姿だ。言い寄ってくる男はごまんといるか……それにあいつらも襲ってたし……」 「?」  えっと?  春? 春って売り物なの? 冬や夏みたいに待っていれば勝手に来るものじゃないの?  龍サンが何か良くわからない言葉をブツブツ言っている。  首を傾げていると、龍サンは、『う~ん』と低く唸った。なんだかその唸り方、縄張りを守っている時のイヌさんみたいだ。  イヌさんはいつもそうやって塀を跳び越えるボクたちを目の敵にするんだよね。 「……わかった。もういい。お前は俺の傍にいろ。それでもって勝手に出歩くな。これからはお前の身体は俺のもんだ。誰にも渡すなよ?」 「?」  よくわからないけど。  それってつまり、龍サンの傍にいてもいいっていうことだよね? 「うん、約束するっ!!」  腰にしがみつき、お腹にほっぺたを擦り寄せる。 「お前はなんでこうも保護欲を引き出すんだろうな」  ポンポン。  ボクの頭を撫でてくれる。  ホゴヨク? よくわからないけど、まあいいや。  だってこれからもずっとずっと龍サンと一緒なんだモンッ!!  **ボクの願い・END**

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