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次の日~お願い~

 ーー明くる日。  やっぱりボクは龍サンとあまりお話をしないし、頭も撫でてもらえなかった。  いつもみたいに日なたぼっこするけど、龍サンに嫌われたって思うと悲しくて、ぼーっとしたくなかった。  だから、男の人が廊下を拭いているのを発見したからお手伝いをしようと思ったんだ。 「えっと、ボクもお掃除したいです」  四角に折った布を持っている、ほっぺたに傷があるお兄さん。  ちょっぴり怖そうだけど、でも気にしない。  ボクがそう言ったら、お兄さんはちょっぴり困っている様子だった。 「いけやせん、ご友人にそのようなことをさせてしまっては若頭に叱られてしまいます!」  お兄サンは首を振る。  ……えっと、若頭って誰のことだろう? 「わか、がしら?」  首をひねると、そこで思い出したのはここへ来た当初のことーー。  この男の人たちが一列になって龍サンをお出迎えしていた時、たしか『若』って言っていたのを思い出す。  ああ、きっと龍サンのことだ。 「龍サン? 龍サンはそんなことくらいで怒らないよ?」  怒っているのは違う理由だ。  ボクがーー嫌いになったから……。  龍サンはもう、ボクと一緒にいるのが嫌になったんだろう。  だってボク、何も知らない。  何もわからない。  それでも龍サンがボクを捨てないのは、きっとひとりぼっちだって言ったからーー。  誰にも頼れる人がいないって言っちゃったから。  優しい龍サン。  だけど、ボクのことが嫌い。 「……っつ!」  考えたらその分、悲しくなる。

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