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嫉妬。~優しさの返し方~
だから三毛とそうなるのもわからないでもない。
三毛は可愛いし、そこいらの女よりずっと純粋で保護欲をそそる。
だが、三毛は俺が拾ったものだ。
横取りなんてさせてたまるかよ。
「三毛!」
「龍サン……」
俺が声をかけると、ようやく二人は俺の存在に気が付いたらしい。
常ならば、俺が三毛を呼ぶと嬉しそうに走って来るのに、今は違う。
顔を俯け、しゅんとしていた。
その理由は明白だ。
ここへ来てからというもの、俺がとことんまで三毛を突き放しているからだ。
三毛を大切にしたいと思った。
それなのに、三毛は祖父さんの膝に乗り、楽しげに遊んでいる。
祖父さん、いい年こいて将棋倒しかよ!!
それに、祖父さんの腕が三毛の腹に回っている。
それを見た瞬間、俺の頭がカッと熱くなった。
何も考えられなくなって無言のまま、三毛の手を引く。
「龍サン?」
「煩い! 黙れ!!」
突然手を引っ張られ、怯える三毛をーーだが俺は突き放すように言った。
「ッツ!!」
唇を噛みしめる三毛が視界の端に見えた。
……違う。
そうしたいんじゃない。
三毛にはもっと優しくしてあげたいとそう思うのに、両親に捨てられた半端者の俺には愛情の渡し方がわからない。
三毛、三毛。
俺はどうやって優しさを返せばいい?
三毛からもらった優しさを、うまく返せない。
三毛の笑顔が俺のささくれ立った気持ちを解かし、温かなものへと変える。
それなのに俺ときたら、優しさの返し方もわからないんだ。
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