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嫉妬。~幸せにできない~
こんな不器用な俺と一緒にいたって三毛は少しも幸せになれない。
そんなことはわかっている。
俺のような両親からも捨てられた奴じゃなくて、三毛はもっと思いやりのある人間のところに行かせるべきなんだ。
ーーああ、だが三毛を誰にも渡したくない。
三毛は俺のものだ。
俺は無言のまま、離れにある俺の部屋へと三毛を押しやると勢いよく襖を閉めた。
「龍サ……」
不安そうな顔を俺に寄越す。
それもそうだろう。
俺は未だに無言のまま、こうして布団に組み敷いているのだから。
「黙れ!!」
自分の口で三毛の唇を塞いだ。
「ん、ううっ!!」
「三毛、三毛……」
塞いだ口から三毛の声が漏れる。
好きなんだ。
お前を誰にも渡したくない。
だが、俺と一緒にいれば、三毛は幸せになれない。
それどころか俺たちを付け狙う組織に狙われる危険性だってある。
俺は三毛を守るだけの力があるのか、自分でもわからない。
それでも、三毛を手放したくない。
傍に置いておきたい。
「三毛……」
こんなに胸が締めつけられるのも、この身が引き裂かれそうに痛むのも、お前が初めてだ。
俺は、けっして言葉では言えない想いの代わりに、華奢なその身体を掻き抱く。
「龍サン? どうしたの?」
俺の態度がおかしいと思ったのだろう。
三毛は俺の背中にそっとその手を回し、訊ねた。
だが、この想いは言えない。
言えば最後、心優しい三毛は俺の想いが重すぎて潰されてしまうかもしれない。
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