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嫉妬。~三毛らしい~

 そういうところでは、俺は自分を信用していない節がある。  両親に捨てられた分、誰かの愛情に飢えているのかもしれない。  そして酷く抱いてしまう可能性がある。 「三毛!」 「ボク、龍サンと後尾するのいいよ?」 「こうっ!?」  ーーさて、今三毛は何と言った?  まじまじと見ると、三毛の真剣な眼差しが俺を射貫いてきた。  俺は三毛の口から飛び出た率直な言葉に驚いた。  まさか後尾とくるとは思わなかった。  純粋というか何というか。  まあ、らしいといえば三毛らしい。 「違うの?」  三毛は小首を傾げた。 「いや、違うことはないが……ははっ、そうか。後尾か」  三毛の言葉に、俺はなぜか安心してしまう。  腹の底から笑いが込み上げてきた。  クツクツと声を上げて笑う声は本当に自分のものだろうか。  今まで面白いと感じたことのなかった感情を、三毛は簡単に引き出してくる。  本当に、三毛だけなのだと自覚する。 「三毛、好きだ」  俺の感情はもしかするとどす黒いものではないのかもしれない。  そう思った時、口からするりとその言葉が出た。 「交尾したいくらい?」  交尾。  たしかに、違いない。 「……ああ」  訊ねる三毛に、俺は頷いてみせた。 「ボクも! 龍サンと交尾したい!」  三毛は満面の笑みを浮かべて俺に抱きついてきた。  純粋で可愛い三毛。  だからこそ、大切にしてやりたいと思う。 『愛している』という代わりに、三毛の額に幾度となく唇を落とす。  三毛はくすぐったそうに首を引っ込める。  その姿さえも可愛いなんて反則だろう?  しばらくそうやって抱き締めていると、三毛は顔を上げた。 「でも、龍サン。ボクを嫌ってる……」

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