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ボクのお仕事。

 ボクは三毛。  猫だったんだけど、『人間になりたい』って神様にお願いしたら人間になれたんだ。  どうして人間になりたかったのかっていうと、  好きな人が人間だったから。  おっきなカタマリに突っ込まれそうになった時に助けてくれた優しい人が気になって。  気が付いたらお傍にいたくて、初めは近寄るなって言われたんだけど、諦めきれなくてずっとずっと追いかけていたら、「傍にいていいよ」って言ってくれたの。  ボクの好きな人の名前は龍サン。  ちょっぴり無愛想だけど、すごく優しいのッ!  格好良くて強くて……。  それでもってみんなに若って呼ばれてる。  龍サンはどこにいても人気な人なんだッ!  すごいでしょ。  頭もよくって、よくみんなに相談もされてるんだよ?  エッヘン!  何でもできる龍サンなんだけど……。  でもね、ひとつできないことを発見しちゃった。  朝、起きるのがすごく苦手みたい。  ボクなんてお日さまが、『こんちはッ!』ってしたらすぐ目が覚めちゃうのにね?  龍サンはいつもずっと寝てるの。  だからボクは龍さんを起こすのがお仕事なんだ!  チュン、チュン。  あ、ホラ。  もうすぐお日さまが、『こんちは!』ってするよ。  だってスズメさんがおはようって言ってる。  だからボクの出番だ。 「龍サン、龍サン」 「……ん」  ゆさゆさ。  お隣で寝ている龍サンの身体を揺らす。  だけどお目めは閉じたまま、う~んって言ってる。  もう!  お日さまが、『こんちは』しちゃうよッ! 「龍サン、龍サン。朝だよ? お日さまこんちはッだよ?」 「……ん」  ユサユサ。  身体を揺すったら、ようやくお目が開いた。  龍サンのお目めはまるで夜のお空みたい。  すごく静かであたたかな、綺麗なお目め。 「三毛、おはよ」  ちょっぴり掠れている声でおはようを言ってくれる。  この掠れた声は、なんでだろう。  お腹の奥がムズムズするの。  それでね?  お目めがパッチリしたら、ボクを真っ先に見てくれる。  龍サンはすごく優しい!  ボクの大好きな人。  大好きッ! って思ったら、嬉しくなってボクの口がニンマリしちゃう。 「おはようッ、龍サン! 今日もいいお天気だねッ!!」  ニンマリしながらお返事したら……。  龍サンの腕が伸びてくる。  あれ?  そう思った時には、ボクはムンズって捕まった。 「龍サン? 朝だよ?」 「……三毛」  ギュってされて、お布団の中にまた戻されちゃった。 「龍サン、お日さまこんちはッ! だよ?」  気が付けばボクは龍サンの腕の中。  片足がしっかりボクの腰の上に乗っている。  起きなきゃいけないのに。  朝なのに。 「リュ、」  龍サンに起きてって言おうとしたら――。 「ん、うッ!?」  ボクのお口が龍サンのお口に塞がれちゃった。 「んぅ、うううう……!!」  **ボクのお仕事。・END**

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