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三毛の仕事。
「龍サン、龍サン」
ユサユサ。
三毛が俺の身体を揺らしている。
だからもうそんな時間なんだと思った。
実は三毛が起きる前にもう目が覚めてはいるんだが、三毛が楽しそうにしているから、いつもこうやって三毛が起こしてくれるのを待っていたりする。
三毛は純粋ですごく可愛い。
俺にはないものをずっと持っている。
真っ直ぐで、一点の曇さえもない。
それだけに、三毛を大切にしてやりたいと思うし、もっと愛してやりたいとも思う。
「龍サン、龍サン」
ああ、三毛が催促している。
俺はそっと目を開けて、「おはよう」と声をかける。
たったそれだけなのに、三毛の顔にはいっそう満面の笑みを浮かべている。
俺が目を開けると、視線を合わせたそれだけでも三毛は楽しそうに笑う。
それが可愛くて。
いじらしくて……。
せっかく起きてやろうと思う俺の心が見事に打ち砕かれる。
可愛い三毛が悪い。
腕の中に閉じ込めて、ずっとこうやって抱きしめていたいと思ってしまう。
「リュ……」
三毛の小さな唇が起きろと催促している。
口を尖らせるその仕草も可愛いから困る。
小さなその唇を塞いで抱きしめる。
幸い、今日は会合もない。
一日こうやって三毛を困らせるのもいいかもしれない。
「っふ、んぅ……」
塞いだ唇から漏れる声は徐々に甘く変化していく……。
普段は無邪気で可愛らしいのに、こうして口づければ色香が生まれる。
甘ったるいこの声も。
どんなに抱いても未だ恥じらいを見せる姿も。
本当に可愛い。
さあ、今日という一日はまだ始まったばかりだ。
俺は今日も可愛い三毛を堪能する。
**三毛の仕事。・END**
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