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痛いの痛いの飛んでけ。①※嫉妬。よりside:三毛
「すっごいすっごい!」
その日も龍サンはお仕事でいなくて。
だからボクはお爺ちゃんのお膝の上でパタタタを眺めていたんだ。
そしたら……。
「三毛!」
「龍サン……」
あんまりパタタタに夢中だったからいけなかったのかな?
龍サンの声がして振り返ったら、すごく怒ってる雰囲気がした。
ボク。
そんなに龍サンを怒らせちゃったの?
そんなに、嫌われたの?
大好きな人に嫌われるのは苦しい。
悲しくて、ボクは龍サンのお顔をちゃんと見られなくなった。
そしたらね?
龍サン、何も言わないまま、ボクの手を引っぱったんだ。
「龍サン?」
どこに行くの?
わからないまま訊いてみたら、
「煩い! 黙れ!!」
「――っつ!」
どうしよう。
すごく怒ってる。
悲しくて。
だけど泣いちゃったら余計に龍サンに嫌われる。
ボクは泣かないように口を引き結んだ。
無言のまま、龍サンのお部屋に連れられた。
パンッ!
襖が閉まる。
パフン!
「ひゃっ!」
そしてお布団の上。
龍サンに押し倒された。
すぐ目の前には龍サンがいる。
だけど、眉下の先っちょとお目めは上がっているし、眉毛の間には深い皺がある。
「龍サ……」
どうしよう。
すごく怒ってる。
ボク、どうしたら許してもらえる?
涙、出そう。
ヤだよ。
嫌われたくないよ。
せっかく……せっかくニンゲンになれたのに……。
どうしたら許してもらえるのか教えて欲しくて、もう一回龍サンのお名前を呼んだ時。
「黙れ!!」
「ん、ううっ!!」
それは突然だった。
龍サンのお口がボクの口を塞いだんだ。
びっくりしてパチパチ瞬きするボクはもう、涙さえも引っ込んでいる。
「三毛、三毛……」
ぎゅううって、
抱きしめられたんだ。
ボクを呼ぶ声はすごく苦しそうで。
辛そうで。
龍サンが苦しそうにしている姿なんて見ていられない。
どうしたんだろう?
龍さん。
どこか痛いの?
お風邪、ひいちゃった?
「龍サン? どうしたの?」
ポンポン。
いつも龍サンがしてくれてるように。
ボクは龍サンの背中をポンポン、ってした。
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