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痛いの痛いの飛んでけ。③
「いや、違うことはないが……ははっ、そうか。後尾か」
そんなボクを前にして、龍サンはクツクツと声を上げて笑った。
その笑い声がすごく優しくて。
すごくあたたかで。
ボクの胸がキュンって言った。
「三毛、好きだ」
「交尾するくらい?」
「……ああ」
訊ねるボクに龍サンは頷いた。
「ボクも! 龍サンと交尾したい!」
嬉しい。
嬉しい!!
だってボク、龍サンに嫌われていたと思ってたから。
交尾したいくらい好きって言ってくれてすごく幸せ!
ボクのお口がにんまりしちゃう。
「三毛」
……ちゅ。
ボクのおでこに龍サンの唇が落ちてくる。
「……ひゃ」
くすぐったいよ。
首を引っ込めてしまう。
そうしたら、
ちゅ。
またボクのおでこに唇が落とされた。
……でも、でもね。
龍サンはどうしてボクを避けたの?
嫌いじゃないなら避ける必要なかったよね?
ズキン。
そう思ったら、胸がズキズキしてきた。
悲しくて苦しくて。
「でも、龍サン。ボクを嫌ってる……」
……うう。
泣くのはやめようと思うのに、涙が出そうになる。
「三毛、違う。お前を嫌っているのではなくて……」
ボクの言葉に、龍サンは首を振った。
どうしちゃったのかな?
龍サン、なんだかすごく言いにくそう。
……どうして?
えっと?
「……ああ」
そっか。
もしかして龍サン交尾が恥ずかしかったんだ!
そっか、そっか。
うんうん。
「龍サン、ボクと交尾したくなったんだね?」
そっか、そっか。
恥ずかしいからボクと目を合わせられなかったんだ!
そう思ったら涙は引っ込んでしまう。
だけど、あれれ?
ギュッ。
龍サン?
龍サン、ボクを抱きしめたまま動かないよ?
「龍サン? 後尾は?」
しなくていいの?
訊いてみたら、
「後で」
「あと?」
「みんなが寝た後に――もう少し暗くなってから」
窓からは赤いお日さまがこんにちはってしてる。
そっか。
お日さまに見られるの恥ずかしいもんね!
「うん! それから後尾だね?」
ボクはうん、って頷いた。
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