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首筋に刻まれた歯形。 ……だけどこれは、番の証にはならなかった。 まだ、僕の身体がΩへと変換している途中で、核心的な部分がまだ未発達なのかもしれないな…… なんて、祐輔が冗談ぽく言う。 「……覚えてるか?」 気怠い体。心地良い疲労感。 僕の傍らに横たわる祐輔が、静かに口を開く。 「昔……横峯が、お前の親父さんの話をした時の事」 「………うん」 汗で濡れ張り付いた前髪を、祐輔がそっと指先で剥がしてくれる。 甘くて、優しくて……心をゾクゾクと震わせる、愛しい黒瞳。 「俺や他の奴らは、横峯の言葉に賛同しただろ?」 ……覚えてるよ…… 診療所に島の子供達を全員集めて、横峯がこの島の歴史を話した、あの日── 『お前の親父って、凄ぇ奴だったんだな!』 隣で聞いてた祐輔が、目をキラキラさせて、僕にそう言ったんだよね。 「でも葵は、全然嬉しくなさそうでさ。俺は、肉親を亡くしたからだと勝手に思い込んでた。 そしたら葵、俺の予想を遙かに越えた事言ってきてさ。 潤んだ大きな瞳から、ぽろぽろ涙を零して『……狼さん達が、可哀想』って。 その時思ったんだ。 ……あぁ、俺にはない感覚を、コイツは持ってるんだな……って」 窓から臨む、遠い海と月。 ベッドの中で、祐輔の腕が僕を優しく包み込む。

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