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×××
……熱い……
灼け付く様に熱くて、やたらと喉が乾く。
額や喉元に滲む汗。
拭う気力さえ、今はない……
閉じた瞼を透かす、淡い光。
……朝……?
瞼を僅かに持ち上げれば、大きな満月が静かに僕を見下ろしていた。
……そっか……
まだ、夜は明けてなかったんだ……
異変に気付いたのは、病室の前を通った時だった。
祐輔を起こさない様ベッドから降り、身支度をしてそっと部屋を出る。
廊下に出て初めて、ここが看守の仮眠室である事に気付いた。
妙な静けさ──
違和感を覚えながらも、独房横の廊下を歩く。
長い渡り廊下。その先に見える病室前を通り抜けようとした時……
不安を掻き立てる、妙な胸騒ぎがした。
「………!」
病室のドアを開け、絶句する。
ベッドにいる筈の囚人達が……いない。
「……うっ、」
低く呻く、男の声。
照明の消えた部屋の中央に、腹を抱えて踞っていたのは──白衣姿の、横峯。
「………先生!」
全開の窓から風が吹き込み、白いカーテンがバサリッ、と揺れる。
……まさか、脱走………
『もし犯罪者がこのまま増え続けて、暴徒化して、看守の俺らが止められなくなったらどうすんだよ』
祐輔が吐いた台詞が脳裏を過る。
瞬間、背筋が凍り付いた。
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