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「……逃げ、なさい……」 苦しいのか。横峯は嗚咽を繰り返しながら、声を絞り出す。 「でも……先生を置いてなんか……」 横峯の頭を抱え、正座を崩した膝の上にそっと乗せる。 あまりに苦しそうな横峯に 不安で胸が押し潰されそうで…… 込み上げ溢れそうになる涙を、必死に堪える。 「……葵……」 背中を擦る僕に、蒼白い顔をした横峯が弱々しく微笑む。 「葵は、未来に生きる者達の……希望の光、なんだよ……」 「………!」 何で…… 何で今、そんな事…… 僕にはもう、そんな力なんて無いんだよ……? 『英雄が残した子』 流刑島となったその瞬間から課せられた……島民達の希望の光。 ……僕はもう、そんなものにはなれないのに…… 「……ふふ。少なくとも僕にとっては……希望の子だよ。……だから、そんな顔をしないで」 「……」 「……ねぇ、葵。少しだけ、僕の話を……聞いてくれるかい……?」 そう話しながら咳き込む横峯に、必死で笑顔を作り、何度も頷く。 それを見届けた横峯は、焦点の合わなくなった瞳で、口角を少しだけ持ち上げた。 「今から、二十年前。 僕がこの地に、倫太郎と啓介と共に降り立った時……待ち伏せていた狼に襲われたと言ったね。 ……でもね。実は……その逆…… 我々は、彼等から歓迎を受けたんだよ……」 それは、思ってもみない内容だった。

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