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──その姿は、確かに『人』だった。 しかし、何かが違っていた。 原住民らしい、裸体の男女。 揉み上げ、腕、胸元、下腹部、脛──それらが通常よりも濃い毛に覆われていた。 視察団は全部で五人。 倫太郎、啓介、安田、医師の匠海、そして助手の僕。 島に辿り着いて直ぐ、片足を負傷した安田は、匠海と共に船に残った。 「もし一日経っても戻らなければ、構わず本土へ引き返せ」 倫太郎の指示に、二人は了承する。 狂ったように生い茂る草木を掻き分け、島の奥地へと進む。 僕の前を歩く二人は、幼馴染みであり親友であり……時に、それ以上の関係にも見えた。 しかし、それは僕が倫太郎に憧れと淡い恋心を抱いていたから、そう見えていただけかもしれない…… どれくらい歩いただろう。 密林の中を風の様に走り抜け、僕達の前に姿を現したのは──水色と琥珀色の瞳をした『人』だった。 案内され辿り着いたのは、山岳の麓にある小さな洞穴。 歓迎の儀式なのか──男三人、女一人、子供五人が、開けた場所で火を囲む。 その中に僕等を座らせれば、大きな葉に乗った木の実や小動物の肉が差し出された。 「……こんなもん、食えるかよ」 チッと舌打ちし、吐き捨てる啓介。 「しっ。聞こえるぞ」 「……解るもんか」 倫太郎が制するも、顔を歪めて構わず言い放つ。 そんな啓介に気付いた女が、口角を上げ和やかな笑顔を向けた。 彼等は喋らない。言葉がない。 こうしてお互い微笑み合う事が挨拶であり、会話の様であった。

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