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第57話 渉外 Ⅱ

廊下を歩きながら このまま佐倉に、家の近くの病院で 降ろしてもらおうかと考えていた 帰りに美味しい物を食べても良いし、創の買い物に行っても良い 兎に角少しでも 気分転換になる様な事をしてあげたかった 出口が見えた所で 創にその提案をしようと 口を開きかけた時、廊下に耳障りな声が響いた 「あっれぇ⁇ なぁんだ そ〜くん居るじゃん♡」 「ひっ‼︎」 創は小さく悲鳴を上げたかと思うと、ガタガタと震え始め、只ならぬその様子に 前から歩いて来る声の主に 無意識に視線が向いていた 根本が黒くなっている金髪の様な色の髪 三白眼の目を細め 嫌らしく笑う口元に 言い様のない嫌悪感を覚えた 震える創を抱き寄せると、俺の服を これでもかとばかりに握っている 「ていうか どうしちゃったの⁇ そんな 普通の服着ちゃって… そ〜くんはやっぱり あの白い服か女装か〜」 ぺらぺらと勝手に喋り続ける男は、創の全身を舐め回す様に見ていて 怒りが込み上げてくる 美しい物が汚されていく様な感覚に苛立ちが募っていった 「裸でしょ⁇」 この時 創が抱きついていなかったら 俺はこの男を殴っていたと思う

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