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第59話 渉外 Ⅳ
男が創に触れようとしたその手を払いのけた
神聖なモノに 汚物が近付く様な感覚がして 吐き気がする
「じゃあ どうぞ とでも言うと思ってるんですか⁇
汚い手で 触るな」
「…ゆうご」
「あなたと話しても時間の無駄なので、失礼します」
創を庇うようにして横をすり抜けると、男の喧しい声が 後ろから響いてきた
「俺が汚いって⁇
お前 そいつが綺麗だとでも思ってんのかよ⁇
なぁ 教えてやれよ そ〜くん 俺にどんな事されたか」
無視して進もうとしたら 創の足が止まり、つられて俺まで立ち止まってしまった
どうしたのかと 顔を覗き込むと、創は顔を真っ赤にしながら 唇を強く噛み締めていて、大きな瞳からは 今にも涙が零れ落ちそうになっていた
「…創⁇」
「この前の発情期の時 スゴかったよね〜
一週間 抑制剤無しで過ごしてさ〜
そ〜くん 可笑しくなっちゃったかと思ったよ〜」
こちらには御構い無しで話し続ける男の言葉に、怒りで全身が わなわなと震え出すのが分かった
今まで味わった事が無い感覚に 胸の辺りがムカムカする
「最初は お薬くらさい‼︎ とか言ってたのに、結局 奥まで弄って〜ってお強請り始めちゃって♡可愛か」
俺は創の手を離し 男の元に足早に歩み寄ると、その胸倉を掴んで 壁に叩きつけた
男は痛みに声を発していたが それでも手の力が弱まる事は無かった
「…お前 どうせ金貰いに来たんだろ⁇
あの端金受け取って さっさと消えろよ」
「ああ⁉︎」
睨みつけてくる男の首を絞める様に 腕に力を込めた
ぎりぎりと締めつけると 男がむせ込んできたので、そのまま床に向かって投げ飛ばした
「…不愉快な奴」
そう吐き捨てて創の元に戻ると、踞り泣いている創を抱き抱え そのまま外へと連れ出した
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