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第60話 帰路
「創 何か美味しいもの食べてから帰ろっか⁇
それか どっか行きたい所とか…」
俺の提案を 首を小さく振って 拒否したかと思うと、小さい声で 何かを口籠っている
「ん⁇ ごめん もう 一回言って⁇」
創の口元に耳を寄せると 震える声で もう一度呟いてくれた
「…ゆうごの…お家…行きたい…」
弱々しい声色は 俺の方まで泣きたくなる程だ
嫌な思いをさせてしまって、申し訳ない気持ちが込み上げてくる
「ん… 分かった でもね 創」
俺が少し間を開けると 創は恐る恐るといった様子で、俺の事を見上げた
その不安を取り除いてあげたくて 口角を上げると、創の額に自分の額をくっ付けた
「もうあの家は 創の家でもあるんだから、俺の家に行きたいじゃなくて 自分の家に帰りたいって、言って欲しいかな」
「……ぼ…くの…⁇…かえ…る…⁇」
「うん」
疑問符を浮かべる創の言葉を肯定すると、見る見るうちにその目に涙が溜まって、次の瞬間には 次々と溢れ落ちて行った
「帰る‼︎ お お家‼︎ 帰る‼︎」
「ん…帰ろ」
俺の首にしがみつきながら泣く創を抱え直し、駐車場へと歩を進めた
車の中に居た佐倉は 俺達に気がつくと、一瞬驚いた様な顔をしていたが、直ぐに降りて来て 後ろのドアを開けてくれた
「ご自宅で大丈夫ですか⁇」
「ああ 悪い 助かる」
「とんでもございません」
いつもと変わらない笑顔を浮かべる佐倉に 何だかホッとした
この時初めて、自分も気を張っていた事を自覚した俺は、腕の中にいる創を見て 甘える様に擦り寄った
抱き着かれてる腕に力が入れられれば、俺の方も 頭を撫でられている様なそんな気持ちにさせてもらっていた
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