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第95話 陥穽 Ⅲ

身体を揺さぶられる感覚に 重い瞼を開けた 頭がボーッとして 思考が定まらない 「大丈夫ですか⁇」 マスターが渡してくれたおしぼりを目の上に当てた 少しずつ頭が覚醒してきて、チラリと隣を見ると 空席な事に安堵の息が漏れた 「すみません ご迷惑を… お会計して下さい」 「いえいえ 大丈夫ですよ お連れ様から お代は頂いております」 「え⁇」 眉間に皺が寄るのが 自分でも分かった アイツが俺に奢るなんて 薄気味悪い 咄嗟に自分のポケットや鞄を確認して、無くなっている物がないか確認したが、財布の中身も今朝と変わりなくて 拍子抜けしてしまった 礼を言おうにも 連絡先も知らない 「…まぁ いっか」 未だに頭が重かった俺は 考える事を放棄してしまい、また来るとマスターに頭を下げると 自宅への帰路に着いた

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