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第96話 籌略

「行ってきます」 「行ってらっしゃい」 玄関まで佑吾を見送ると 触れるだけのキスをしてくれた それだけで 心がポカポカして温かい リビングに戻り 朝ご飯の洗い物をしている最中も、自然と鼻歌を歌ってしまう その時 ピンポーンとチャイムが鳴り、僕は首を捻った 物井先生が来るのは 昼過ぎの予定で、どう考えても早い 佑吾が何か忘れ物でもしたのかと、小走りでインターホンへと駆けて行ったが ディスプレイに映し出しされたのは、マスクをして 服とお揃いの帽子を目深に被った男の人だった 『宅配便で〜す』 そう一言発すると ゴホゴホと咳き込んでいる 「…あ…えっと…」 物井先生や佐倉さん以外の人が来た時に言う事は… 「すみません…僕 留守番なので 分からないんです」 これで良いと言われた 必要があれば 佑吾の携帯に連絡が行くからと 『でもこれ 生物なんで 早目に受け取って、冷蔵庫に入れて頂きたいんですが』 「…え」 どうしよう… 佑吾に電話しようか 悩んでいると、間髪入れずに 男の人は喋り続けた 『こちらは 伝票にサインさえ頂ければ大丈夫なんで、受け取られたら お家の方も助かると思うのですが…』 そう言われて 佑吾の笑顔が脳裏に浮かんだ 受け取って冷蔵庫に入れるだけなら 僕にも出来ると思ったし、何より佑吾に喜んで欲しいと思った 「…じゃあ…どうぞ」 そんな思いに駆られた僕は、横にあるボタンを押して その人を中に招き入れた

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