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第109話 防疫
「本っ当にゴメン‼︎」
「何回も言ってるだろ⁇
物井の所為じゃない…
俺も…ちゃんと話してなかったし」
深々と頭を下げる物井の肩に触れたかったけど、創を抱き抱えてる為 両手が塞がっていて それは叶わなかった
顔を上げた物井は 先程とはうって変わって泣きそうな表情をしていて、むしろこんな事に巻き込んでしまって 申し訳ない気持ちになった
「落ち着いたら また連絡する」
「…ああ」
物井がタクシーを停めてくれて それに乗り込んだ後、軽く片手を上げた
走り出した車の中で 創がもぞもぞと動き出し、どうしたのかと覗き込むと 耳まで真っ赤にして俯いていた
「創⁇ どうした⁇」
「…ん…う…」
脚を擦り合わせる動作を見て、まさかと思い腰を引き寄せると 固いモノが腹の辺りに当たり、グッと息を呑んだ
「…何か 薬とか使われた⁇」
以前 創から聞いていた話と 彼奴ならやりかねないという思いから問い掛けると、創は ゆっくりと首を縦に動かした
その肯定を受けて 窓の外に目をやると 運転手に行き先の変更を告げ、裏道の方にある ラブホテルの前で降ろしてもらった
本当はこういう所は好きではないが、一般的なホテルに この姿の創を抱えていたのでは 目立ち過ぎる
早急にチェックインを済ませると そのまま風呂場に直行した
創は 羞恥からか寒さからか、あるいは 全く別の想いからなのか、ずっと小刻みに震えていて 俺は唇をギリッと噛み締めた
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