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第113話 防疫 Ⅴ

「…う…ひっく…」 創からは 鼻を啜る音だけが聴こえていて、俺は白い背中を撫り続けた 「…創」 俺の声に反応して 顔を上げた創の目は、真っ赤になっている それを労わりたくて瞼に口を寄せた後、そのまま唇に触れようとしたら 掌でガードされてしまった 「…創⁇」 「…あ…ぼ…僕…」 創は そのまま手の甲で 自分の口をゴシゴシと擦っていて、俺は咄嗟に その手を掴んだ 「何してんの⁉︎ 唇切れてる‼︎」 「…あ」 また瞳が潤いを帯びていくのを見て 何があったのか、何となく察した俺は 創の唇を ペロリと舐めた いつもとは違って 血の味がする 「創…また自分の事 汚いとか思ってる⁇」 「…う」 涙が落ちる前に親指で拭うと、そのまま両頬を掴んで上を向かせ 今度こそ唇を重ねた 「創は 綺麗だって 何回も言ってるだろ…⁇ もし それでも 気になるって言うなら…」 「………うん」 ジッと見つめると、創がビクビクしてるのが伝わってきて 俺は ニコッと笑顔を作った 「俺が全部…消毒してあげる」

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