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第10話 昏迷Ⅵ

ここに来てから 僕の想像と違う事ばかり起こって、頭が混乱する キレイだって言われた事は 今までにもあったけど、こんな…こんな優しい目で言われたのは初めてで、その視線に 僕は耐えられなかった そして また僕の頭を撫でてくれて、さっきと同じ様に 胸の辺りがぽかぽかした この感じは…何て言うんだろう…⁇ 「ご主人様じゃないよ…俺 桃坂 佑吾 佑吾って 普通に呼んで⁇」 名前を言われたのも初めてで、僕はゆっくりとだけど もう一度顔を上げた 「…ゆ…ゆうご⁇」 「うん 君は創君だよね⁇ 創って呼んで良い⁇」 この人は どうして僕に許可を求めるの⁇ そんなの 皆勝手に呼んでいるのに… 「………」 悲しくないのに 涙が出そうになって、言葉を発せられないと思った僕は、首を縦に動かす事しか出来なかった 「創、俺といる時は そういう事しなくて良いからさ」 「で でも…」 「もし 何かしたいっていうなら 俺の抱き枕になってよ 最近 よく眠れなくて…」 笑いながらそう言う彼に何て返したら良いのか分からない 「じゃあ もう寝よっか 疲れただろ⁇」 彼は 軽々と僕をお姫様抱っこすると、そのままベッドまで運んでくれて、優しく布団の上に降ろしてくれた 「おやすみ 創」 「…おやすみなさい」 彼は僕を抱き締めると 本当にそのまま眠ってしまった 「…ゆうご」 小さく彼の名前を呟くと、何故か涙が一筋 僕の目から流れて落ちた 今日は分からない事ばっかりで、まだ混乱しているんだと思う 「…ゆうご」 もう一度呟くと 反対側からも涙が溢れた 彼の腕の中はとても温かくて 無意識に顔を寄せていた 僕は こうして売られる様になってから、お客様の前で 初めて服を着たまま寝た

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