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第21話 外出 Ⅱ

「…すごい」 テーマパークの入口での 創の呟きを聞いた瞬間俺は クスッと笑ってしまった 「創は ここ来た事ある⁇」 「小学生の頃に…何回か…」 俺の問い掛けに、創は きょろきょろと辺りを見回しながら答えた その返答に、創も普通に学校に通っていた時期があったのかと少しだけ驚いたが 特に詮索はしない事に決めた こんなにキラキラした瞳が 曇る様な事があったら嫌だし、創の方から いつか話してくれたら良いと思った しかし ハロウィンシーズンという事も手伝ってなのか、奇抜な恰好をしている人が多く、創の髪色や瞳が あまり目立たなくて、ここにして良かったなと思った 中に入ると 両サイドに ずらりとショップが立ち並んでおり、確かに見ているだけで 少しウキウキしてくる気がした 「創 帽子コッチにしたら⁇」 側のワゴン車で売られていたキャラクターの被り物を指差すと、創はキャップを両手で押さえて 少し俯いてしまった 「良かったら被って見て下さい」 「ありがとうございます」 俺は 創のキャップをパッと取ると、売り子のお姉さんが手渡してくれた黄色い熊の帽子を 創の頭に被せた 「あ‼︎」 俺が顔を覗き込むと 見る見るうちに真っ赤になってしまい、帽子の熊と相まって その姿はかなり可愛らしいものだった 「すみません コレ下さい」 「ゆうご‼︎」 料金を支払い その場でタグを切ってもらうと、俺は 創の手を取った 「何乗る⁇ それか何か食べる⁇」 創は俺の言葉に 少し頬を膨らませているが、繋いだ手と反対側の手で 俺の腕をギュッと握ってきた 「…ありがと」 園内のBGMと周りのざわつきで 聴き取りにくかったが、その言葉は確かに 俺の耳に届いていた

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