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第122話 心傷Ⅲ

苦しい 息が上手く出来ない 『そ〜くん♡』 やめて 来ないで 嫌だ いやだ イヤだ 頭の中の本棚が一斉に倒れてきてパニックになった それに抗う様に暴れていると、両腕を掴まれて ヒッと息を呑んだ 恐怖に目を見開いた瞬間 唇に柔らかいモノが当たって、温かい空気が肺に広がっていく感覚がした 「…創 俺が誰だか解る⁇」 優しい声色に 暗い世界から引き戻される感覚がした いつもは拘束されたら身動ぎ一つ取れないのに、掴まれた筈の腕は自分の意思で動かす事が出来て 恐る恐る目の前にある顔に触れた 「…ゆ………ご…⁇」 「…うん…そうだよ…」 僕を宥める様に背中を摩ってくれて、強張っていた身体の力が抜けていくのを感じた 震えながら背中に腕を回すと 佑吾は抱き締めてくれて、それはすごく嬉しい事の筈のに 悲しみが瞳から溢れて止まらなかった

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