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第135話 憂心 Ⅲ
「…創…何かあった⁇」
その晩 ベッドに入るやいなや、創はこれでもかとばかりに 俺に抱きついてきた
取り敢えず怒っている訳ではない事にホッと胸を撫で下ろし、少し余裕の出来た俺は 柔らかい髪を撫でた
「はーじめ⁇」
無言の創の額にキスをすると やっと俺の方を向いてくれて、俺は口角を上げたまま 首を傾けた
「…お引っ越ししたら」
「うん⁇」
「…お引っ越ししたら…もう一緒に寝ないの⁇」
「え!? 寝るよ!? 何で!?」
寝室別々なんて事になったら 俺が泣く
ただ俺がそう言っても 不安そうに視線を泳がせている創
その様子が何だか可愛くて グイッと身体を引き寄せた
「新しい家でも ずっとこうしてるよ⁇」
「…本当⁇」
「勿論」
「…良かった」
安堵の声と共に 俺の胸に擦り寄る様はまるで猫の様で無意識に フッと笑っていた
「でも どうしてそんな事思ったの⁇」
素朴な疑問を投げ掛けると 創は俺から視線を逸らした
「…だって…僕の部屋にベッド買ってくれたから」
「え⁇ ああ!!」
可愛らしい勘違いに 思わず ハハッと笑ってしまい、頬を膨らませた創に ポカポカと叩かれてしまった
「ごめんごめん 創の部屋にもベッドを買ったのはさ
毎日別々に寝るためじゃなくて、俺が遅い時とか 創の事起こしたくないし、それでだよ⁇」
「…そうなの⁇」
「うん だから普段は 毎日一緒に寝よ⁇」
「うん」
嬉しそうに微笑む創に 心が和む
細い髪を梳く様に撫でると 連日の疲れからか、創は直ぐに寝息を立て始めた
その白い頬に軽くキスを落とすと 俺もゆっくり瞼を閉じた
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