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第138話新居Ⅲ〜side創〜

いつもは僕が抱き締めてもらってばっかりだから、この体勢が新鮮過ぎて少し落ち着かない でも佑吾から寝息が聞こえてきて 何だか嬉しくなった 「ふふ」 思わず出てしまった声に慌てて口を噤んだが 佑吾は起きる気配も無く、すやすやと眠り続けている その様子に頬の筋肉が緩むのが自分でも分かった 佑吾の髪はハリがあって、僕の髪とは全然違う手触りだ 佑吾の髪に触れながら、僕は今日の事を思い返していた 自分の部屋で寝ようとしても新しい匂いのするそこは、目を閉じると思い出したくもない事が 次から次へとと脳裏に浮かんで、とてもじゃないけど眠る事は出来なかった 佑吾が居ないのに勝手に部屋に入るなんて悪い事だとは思ったけど、部屋の隅にあるいつもの灯を点けると、それだけでかなりホッと出来た その後 ベッドに佑吾のパジャマがあるのを見つけて つい手に取り 顔を寄せると、まるで佑吾に抱き締めらている様な感覚がして目の奥が熱くなった そしたら昨日まで寝ていたベッドにどうしても入りたくなって 数秒だけ悩んだ後、結局潜り込んで 気がついたら眠ってしまっていた 起きた時には佑吾が帰って来ていて、僕が此処に居る事を許してくれた事が本当に嬉しかた 「…大好き」 いつも佑吾が僕にしてくれる様に 佑吾の髪にキスをした後、僕もゆっくりと目を閉じた

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