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第139話 新居Ⅳ

この数日で 創は料理の腕前が 確実に上達していた 一度見たら忘れないというのが生かされているのだろう 今朝出してくれた朝食も 寝起きだと言うのに箸が進む 「あ、そうだ 物井 昼過ぎには来てくれるって  また 頑張ろうな」 「うん」 ここのマンションが良いと思ったもう一つの理由は、チャイムの音が前とは全然違うから おかげで 創のパニックが起こる事無く過ごせていて、やっぱりこの部屋にして正解だったなと思っていた 「じゃあ 行ってくる」 「行ってらっしゃい、あの…佑吾」 「ん⁇」 玄関先で創がもじもじしているので、どうしたのかと首を傾げると 頬をピンク色に染めながら 俺を上目遣いで見つめてきた 「今日も…お布団温めても良い⁇」 「…うん 勿論」 本当にさ…なんで こんな可愛いんだろう 許されるなら 今すぐベッドに直行したい 「佑吾⁇」 ハッと気付いた時には 華奢な身体を抱き締めていた なんて恐ろしい創マジック 大きく息を吐いて体を離すと、白い頬にキスをして ドアノブに手をかけた 「…行ってきます」 「うん お仕事頑張ってね」 俺がこんな邪な事を考えているなんて思ってもいないであろう創は、天使の様な笑顔で手を振っている 俺は後ろ髪を強く引かれながらも 何とか家を後にした

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