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第160話 合否 Ⅱ〜side佑吾〜

名前を呼ばれて振り返ると、学生時代の恩師が口を開けて立っていた 「先生!! お久し振りです」 古文担当の先生は 以前と同じ黒縁眼鏡を掛けて後頭部を掻いている 昔と変わらないその姿に何だかホッとしてしまい、頬が緩むのを感じた 「おー、久し振りだな 今日はどうしたんだ⁇」 「この子の合格発表の付き添いです   4月からよろしくお願いします」 「ん⁇ 何だお前、もう一人弟いたのか⁇  コッチは随分似てないな」 先生にジッと見つめられて 創が戸惑っているのを感じ、細い肩をグイッと抱き寄せた 「弟じゃないですよ 俺の番相手です」 「え!? あ、そうなのか!?」 先生に上から下まで見られたからなのか、俺の発言を受けてなのか、創は耳まで真っ赤にして俯いている 俺のせいだとしたら申し訳なくて、なるべく早くこの場を切り上げようと 俺は先生の方に向き直った 「先生 相談なんですけど、この子紫外線に弱くて…体育とか 少し考慮して頂けると有難いんですが」 「ん⁇ ああ、そういう事なら確か そういう書類があると思ったが…」 先生が顎に手を当てて考える仕草を取った時 前から蓮が歩いて来るのが見えて、目が合ったと思った俺は片手を上げた 「あ、受かった⁇」 「ああ 春からよろしくな」 その聞き方で もし落ちていたらどうするつもりだったんだろう まぁ、校舎の中にいる時点で確信があったんだろうけど… 「そう、おめでとう  コレ 受かってたら必要でしょ⁇」 そう言ってクリアファイルを差し出されて受け取ると、地毛申請書と病状説明書類が入っていた 「ああ!! 悪い 助かる」 「片方は ぽいのがそれしか無くて…気分悪くしたらゴメン」 「いや ありがとな」 俺達のやり取りを、うんうんと聞いていた先生は 蓮の背中をバシバシと叩いた 「いや〜、流石 生徒会長だな!! 仕事が早い!!」 「いえ 別に…ていうか痛いです」 先生に褒められても 蓮は相変わらずニコリともしなかったが、創の方を見たかと思うと 頭にポンと手を置いた 「おめでとう 頑張ったな」 「あ、ありがとうございます」 何だろう… 言葉のやり取り自体は普通の内容なんだけど… なんか…創が蓮に 見惚れている様に見える… 顔はさっきから赤いにしても、少しうっとりした様なその表情に 口角が引き攣る 「じゃあ、俺はこれで」 そんな俺の事なんて気にも留めていないであろう蓮は、颯爽とこの場を去っていった そんな蓮の後ろ姿を ジッと見つめる創に、今まで芽生えた事のない感情が 俺の中で芽生え始めていた

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