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第182話 入学式 Ⅱ
「創、こっち」
「はい…」
下駄箱の向こうにいた蓮さんに小走りで駆け寄るのと同時に、高めの明るい声が昇降口に響き渡った
「蓮君!! 探したよ!!」
「松岸」
蓮さんの背中のブレザーを掴んだ人は、ピンクがかったふわふわの茶髪と同じ色の猫目が印象的なすごく可愛らしい人だった
背は僕と殆ど変わらない様に見える
「悪い、この子クラスに送ったら直ぐ戻る」
「この子⁇」
蓮さんの言葉の後 僕の方に視線が向けられた
大きな瞳にジッと見つめられて、ドキッと心臓が跳ねる
「この前話しただろ⁇ 兄さんの」
「ああ!! この子がそうなの!? 佑吾さん面食いだね〜」
どんな反応をしたら良いのか分からなくてオドオドする僕に、可愛いその人はニコッと笑いかけてくれた
その笑顔は周りに花でも飛ばしそうな程可憐な雰囲気を纏っていて、無意識に見惚れてしまっていた
「初めまして、松岸 理央(まつぎし りお)です」
「あ…く、鞍月 創です」
「創っていうの⁇ よろしく、あのね…」
理央さんはテテッと僕の側に来ると、口に手を当て 僕の耳元でこう囁いた
「僕もΩだから 何かあったらお互い協力し合おうね」
その言葉もすごく嬉しかったし、至近距離で拝む理央さんは 妖精さんの様に可愛くて、何だか恥ずかしくなってしまい 首を何度も縦に動かした
「でも良いな…佑吾さんと番なんて 羨ましい」
「あ…ま、まだなってないんです」
「そうなの⁇ でも一緒に暮らしてるんでしょ⁇」
「はい…あの…」
「父さんとの約束で、創が16になるまで待ってるんだよ」
「そうなんだ 誕生日いつなの⁇」
「9月です…」
「なぁんだ
あと半年もないじゃん 楽しみだね」
「…はい」
改めて言われてるととても恥ずかしくて、思わず俯いてしまった
「でも良いな 良いな
僕も蓮君と番になりたぁい」
その言葉に顔を上げると 理央さんは蓮さんの服の裾を引っ張って頬を膨らませていた
「お前それ中等部の頃から言ってるけど、よく飽きないな」
蓮さんは短く息を吐くと、理央さんの頭を軽く撫でている
蓮さんの手があった場所を切なそうな顔で触れる理央さんは、今にも泣いてしまうんじゃないかと思う様な表情をしていた
「…だって、ずっと本気だもん」
小さな声でそんな風に呟く姿に、数ヶ月前の自分が重なって見えた様な気がした
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