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第186話 愛心

「あのね!! 僕 友達が出来たよ!!」 夕飯を食べながらニコニコしている創に心の底からホッとした 昼間送ったメールの感じでも大丈夫そうだなとは思っていたが、実際にこの笑顔を見ると俺までつられて笑ってしまう ただ… 「あのね、それでその健っていう子がね」 さっきから同じ人物の話ばかりで、若干口角が引き攣りそうだ その健という人物はαなのかβなのかΩなのか、その辺りをものすごく問い質したいが 先日創を泣かしてしまった事を思い出すと笑顔で耐えるしかなかった 「佑吾と…その…つ……番になるんだって話したらβの自分にはよく分からないけどロマンチックで良いねって」 創が俺の話をしてくれていた事と不意に聞こえたβという単語に、俺の心にゆとりが出来たようだ お陰でやっと素直に言う事が出来る 「良かったな 良い友達が出来て」 「うん!! それにね、蓮さんのお友達の理央さんって言う人もすごく親切にしてくれたよ 同じΩだから 何かあったら言ってねって」 「ああ、理央君 元気だった⁇」 まだ実家に住んでいた頃、何度か家に来た彼の事はよく覚えていた 「うん、明るくてすごく可愛い人だよね」 「そうだね  初めて会った時もニコニコしてて可愛らしかったな  理央君、双子のお兄さんがいて生徒会の後輩でさ  うちの理央、番にどうですか〜⁇なんて言われた事もあったな」 楽しそうな創に 俺も楽しい話題で返したつもりだったが、先程まであった創の笑顔が消えてしまった 「…そ、そうだよね  理央さん すごく魅力的な人だもんね…」 「待って創!! 違うから!!  双子の片割れに言われただけで その時は他に付き合っていた人もいたし、流して終わったからな!?」 「つ!? そうだよね…佑吾なら他にも沢山の人とお付き合いしてるよね…」 ああ!! 何を言っても墓穴を掘ってしまう!! 言葉は止めようと思った俺は 創の隣に行き、横からその身体を抱き締めた 「今の俺には 創だけだよ⁇  世界で一番、誰よりも愛してる…」 「…佑吾…ごめんなさい  僕、直ぐ不安になっちゃって…」 「良いよ  それだけ俺も愛されてるって事だろ⁇」 「うん…僕ね…今 すごく幸せで…」 そう言って微笑みながら 創は俺の腕を握った でも少しだけ 青い瞳が悲哀の色に揺れた気がした 「今日ね…好きな人とこうやって 一緒に居られるのってスゴイ事なんだなって思ったの…  佑吾が僕を見つけてくれたのも 僕の事を好きになってくれたのも、本当に奇跡に近い事なんだなって…」 「…創」 白い顎に指を掛け、桜色の唇に自分のを重ねた 「俺も…めちゃくちゃ幸せ」 「佑吾…」 抱き締め合うと 何とも言えない安心感に包まれ、何度も繰り返しキスをした そして この愛しい存在を、何に代えても護っていこうと 改めて胸に刻み込んでいた  

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