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第171話 選択
父の仕事を知った後も、家の中では以前と変わらずに接していた
笑顔を張り付けるのが特技になったのはこの頃からだと思う
学校でも親しい友人などは作らず、基本的に一人で過ごす様になった
Ωだと知られる事も嫌だったし、何かを期待して裏切られるのも嫌だった
自分は父の様になりたくないと心の底ではそんな風に思っていたんだと思う
勉強にばかり励んだ甲斐あって、それなりの偏差値の大学に無事合格したものの、就職活動を始めるとこの性の煩わしさを改めて思い知った
どこの企業も募集はαとβのみ
検査結果も同封しなくてはいけない為、誤魔化す事も難しく途方にくれていた
しかし 数ある企業の中で桃坂財閥だけは違った
性別も特にこれといった制限の記載が無く、必要書類に唯一検査結果の項目が無かった
ここしかないと思い、決死の思いで履歴書を書いた
しかし最後まで性別欄だけがどうしても書けなかった
自分はここに落ちたら、もう一般企業への就職の望みは薄くなってしまう
Ωだと馬鹿正直に書いたら書類選考で落とされてしまうかもしれない
そんな思いに駆られ、性別欄にβと書き記した
悪い事だとは分かっていても、この時にはそうする以外の選択肢が自分の中では持ち合わせていなかった
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