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第174話 恩義 Ⅲ
「いや〜 桃坂さん、今日はありがとうございました
またよろしくお願いします!!」
「こちらこそ よろしくお願いします」
会食は無事終了し、取引先の方々を見送った後 社長は静かに自分の方を見た
あまりにもバツが悪すぎて 顔が上げられない
「この後 まだ少し時間あるかな⁇」
優しい声色に俯いていた顔を上げた
社長は静かに微笑みながらタクシーへ乗り込み、手招きしてくれている
「…はい」
隣に座れば 変わらずその笑顔を保ってくれていて、涙が出そうになった
窓の外から入る街明かりは社長の姿をより神々しくさせていて、結局目的地に着くまで自分の方からは 一言も口を開く事が出来なかった
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