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第189話 懸念
「創、学校 少しは慣れた⁇」
「え!? あ…うん…」
寝る前のベッドの中で 何気無くそんな質問をしたが、明らかに挙動不審な態度に 頭を撫でていた手が止まる
絶対何かあったんだ
「…何かあったの⁇」
「…ううん 何もない」
「本当に⁇」
つい語尾を強調してしまい、創の細い肩が ビクッと跳ねたのが見えた
しまったと思い 慌てて抱き寄せると、なるべく優しい声色にする様 自分に言い聞かせた
「ゴメン…怒らないから 何かあったなら教えて⁇」
「………あのね」
「ん」
「今日 知らない先輩に、付き合って欲しいって言われて…」
…は⁇
何それ、どんなシチュエーションで⁇
どんな言葉で⁇
どんな奴⁇
ふざけてるんの⁇
色々問いただしたい気持ちをグッと堪えて、ヒクつく口角を何とか抑えた
「…それで⁇」
「勿論 無理ですって言ったよ!!」
「うん…で、相手は⁇ 諦めてくれたの⁇」
「…わ…分からない」
創の返答に 大きく息を吐き出し、小さい頭を自分の胸の方に寄せた
ちょっと今、創に見せられる顔をしていない
「…今後 そいつには関わらないように」
「はい…」
良い返事に止まっていた手の動きを再開させるも、心の中は負の感情でいっぱいで 自然と眉間に皺が寄る
絶対にこういう事は起こると思っていた
だから創を外に出すのは嫌だったんだ
蓮が毎朝迎えに来てくれているから、それで多少の抑止力になっていると思っていたけど、流石に甘かったか…
「…佑吾…怒ってる⁇」
「怒ってないよ」
「本当⁇」
「だって創は 何も悪くないだろ⁇」
そう言って軽く抱き締めれば、創も俺の背中に腕を回して 胸元に頬を擦り寄せている
その仕草が可愛いくて 顎に手を当てると、上を向かせて 柔らかい唇を奪った
平日はしないと決めたので、直ぐに口を離すと 額にも軽くキスをした
「おやすみ」
「…おやすみなさい」
何も起きない事を願うしかないのが歯痒い
こんなに直ぐ近くにいるのに、この日の夜 俺は中々寝付く事が出来なかった
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