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第195話 牽制

「創 学食行こうぜ⁇」 健の言葉にギクッと心が騒ついた 微妙な反応を見せる僕に、健は首を傾げている 「あれ⁇  何か榎戸先輩が創にも話してあるって言ってたけど、違ったか⁇」 「う…ううん…」 昨日の話を 僕から健にはしていなかった 榎戸先輩の事もそうだけど、3年生達に襲われた話なんて 健にはしたくない どうしようと思いながらも、結局健の後に着いて 学食に向かった 「なんだよ、榎戸先輩居ないじゃん  この辺座っとけばいっか⁇」 「…うん」 学食は人が多くて 落ち着かない この中に昨日の人達もいるのかもと思うと変な汗が出てくる 「あ、創だ 隣座っても良い⁇」 高い声に振り返ると理央さんと蓮さんが立っていて、その姿に心の底から安堵の息が漏れる 「勿論です 嬉しいです」 理央さんはニコニコしながら僕の隣に座り、蓮さんは僕の正面に居た健の隣に座った 「…創、朝も思ったけど 体調悪いのか⁇ 顔色悪いけど」 「え!? そうなのか!? 白いからあんまり分からなかったけど大丈夫か!?」 蓮さんの言葉に健が反応して僕、は慌てて胸の前で手を振った 「大丈夫です ちょっと…寝不足で…」 「寝不足⁇ 大丈夫か⁇」 そんな台詞と共に 肩にズシッとした重みを感じて振り返ると、直ぐ側にニコニコした榎戸先輩の顔があって変な声が漏れてしまった気がする 後ろから抱き締められている様な状態に焦って先輩の腕を掴むも、僕の力では振り解く事が出来なかった 「…榎戸」 「ちょっと稜!! 何してんの!? 離しなさい!!」 蓮さんは怪訝な顔付きになるし、理央さんは横で怒ってくれていて ますます焦りが募っていく 「何って 牽制ですよ 創には必要ですからね」 悪びれた様子もなく言う先輩に、四人でポカンとしてしまった そんな僕達の事は気にも留めず、先輩は周りを見渡すと僕の肩をグイッと抱き寄せた 「昼飯中申し訳ないんですけど、この1年A組の鞍月 創に手出す奴居たら 次の日俺がボッコボッコに殴りに行くんで、そのつもりでよろしく♡」 元々ガヤガヤしていた食堂内だったが 先輩が大きな声でそんな事を言うもんだから、さっきまでとは比べ物にならない程 騒がしくなっていった

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