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第208話 精選
皆と別れ駅に着くと健の携帯が震えた
「弟だ ちょっとゴメン」
「うん」
「もしもし⁇ どうした⁇」
健が電話しているのを待ちながら、今日皆にもらったぬいぐるみを眺めた
早く佑吾にも今日の話がしたい
そんな事を考えながら ふふっと思わず笑ってしまった時、健の声がいつもと明らかに変わった
「は!? ノブが怪我!?」
ただならないその様子に顔を上げると健はいつもと違って深刻そうな表情をしていて、すごく不安になった
「分かった
兄ちゃん、友達送ったら直ぐ行くから病院で良い子に待ってろ
うん、じゃあ 一旦切るぞ⁇」
健は通話を終了させた後 一瞬険しい顔になったけど、直ぐにいつもの様に笑いかけてきた
「よし 行こうぜ 創」
歩き始めようとする健の腕を引くと僕はジッとその顔を見つめた
「ねぇ、弟さん怪我したんじゃないの⁇
僕は大丈夫だから早く行ってあげて⁇」
「ダメだ 佑吾さんと約束したからな」
「大丈夫!!」
「ダメ!!」
健の気持ちはすごく嬉しいけど僕なんかの事よ 弟さんを優先して欲しくて二人で押し問答になってしまった
そんな時 後ろからポンと肩を叩かれ振り返るとそこには榎戸先輩が立っていた
「よ、こんな所で何してるんだ⁇」
「榎戸先輩!? 先輩こそ何してるんですか⁇」
健の問い掛けに先輩は親指で後ろを指差していて、僕と健もつられて覗き込んだ
「迎えの車の中からお前らが見えたから停めてもらった」
視線の先には真っ白で高そうな車が停まっていて、運転手さんと思われる方が僕達に頭を下げてくれたので、思わずこちらも同じ様な動作をしてしまった
「んで⁇ 何をお前らは揉めてたわけ⁇」
一瞬健と視線を交わすと今までの事を先輩にザッと話した
本当に大まかな説明だったのに先輩はすごく真剣に聞いてくれて全てを話終わった後 ニッと笑った
「何だ だったらうちの車乗ってけよ
最初に病院行って、その後 創を家まで送って行けば問題ないだろ⁇」
先輩の提案に佑吾の顔が過って、どうしようと思ったけど、兎に角早く健に帰ってもらいたかった僕は大きな声で返事をした
「よろしくお願いします!!」
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