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第210話 精選 Ⅲ〜side榎戸〜

華奢な身体は、力を込めたら折れてしまいそうだ 息を吸い込むと甘美な香りを漂わせていて、細い腰の更に下に手を伸ばしたくなる このまま創を連れ帰って抱いてしまう事なんてきっと簡単に出来ると思う でもきっとその一回で終わりで、今の創を俺が独り占め出来ないのも分かっている 創に嫌われる事が確定しているのに、そんな事をする気は当然起きなかった でも ある可能性を考えた時にどうしても思ってしまう事がある 「稜様 到着致しました」 その声に創がピクリと反応したのを見て、ゆっくりと身体を離した 「着いたって また明日ね」 「はい ありがとうございました…」 ああ 愛しいな… こんな純粋な気持ちを人に抱いたのは初めてだ ドアが開き 創が外に出た時、どうしても名残惜しくなってしまい細い腕を引いた バランスを崩した創が倒れ込んで来たのを良い事に、勝手に白い頬に口を寄せると外からやたらと低い怒声が鳴り響いた 「創!! 何してるんだ!?」 その声に創が青い顔で振り返っていて、その雰囲気に全ての察しがつき、俺も外に出た よく似た顔と毎日の様に接しているから誰だか直ぐに分かる そこに立っていたのは桃坂 佑吾その人で、俺がヘラッと笑うとスゴイ勢いで睨みつけられた 「初めまして 榎戸 稜です」 もしかして俺、殴られたりするのかな⁇ そう思わせるくらいのオーラを佑吾さんはその身に纏っていた

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