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第211話 欝憤

会食中、相手先に緊急の用事が入ったらしく、会は早々にお開きとなった 創に連絡しようかとも思ったが友達と楽しんでいたら悪いし、ここは信用して家で帰りを待とうと思った それなのにタクシーから降りた俺の目の前で、知らない車から出て来た創は、何処の誰とも知らない奴にキスされていたのだ その光景に奥歯をきつく噛み締めていた 「創!! 何しているんだ!!」 俺の声に創がビクッと大きく肩を震わせ、青白い顔をして振り向いたかと思うと車の中からヘラヘラした男が出て来た 「初めまして 榎戸 稜です」 この男には見覚えがあった 確か大手総合商社の跡取りだったはずだ 会話を交わした事は無いが何度か同じパーティーに出席した事がある 「…日向君はどうしたの⁇」 「…あ」 創はおどおどしていて、それが余計に俺の苛立ちを加速させていた 「日向、弟が怪我して病院なんですよ その事で二人が言い合いしてたんで、うちの車で二人を送ったって訳です」 「…それはどうも」 それだけ言うと創の腕を引き、マンションに入ろうとした 「ねぇ 佑吾さん  俺、貴方と話したい事があるんですけど、少しお時間頂けませんか⁇」 そんな引き止め方をされて大きく息を吐いた 自分に少し落ち着く様に言い聞かせ、創には先に家に帰るように促した後、ある程度顔を作って振り返った 「…何かな⁇」 仕方なく歩み寄ると先程までヘラついていた彼は真面目な顔に変わっていて、そこから漂うオーラにαを感じた 「ずっと思ってたんですけど…創ってΩの買春所で買ってきたんじゃないですか⁇」 まさかの問い掛けに絶句してしまった 強い風が俺達の間を吹き抜けていって、彼の少し長い髪が靡いた

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