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第215話 哀痛 Ⅱ〜side佑吾〜
「…ん」
寝惚けながら隣にいる筈の創を探して手を伸ばすも空を切るばかりでパチッと目を開けた
「…創!?」
俺の部屋にその姿は見つけられず、慌ててリビングに行ったがいつもにこやかに迎えてくれる場所にも居なくて冷や汗が流れた
創の部屋の前に立ち、ここにも居なかったらと不安な気持ちで押し潰されそうになった
昨夜は最低な事をしてしまった
嫉妬で怒り狂うなんて八つ当たりもいい所だ
とにかく謝らなくては…
小さく深呼吸をして、祈る様な気持ちでノックをしたが、特に返事は無く 恐る恐るドアを開けた
「…創⁇」
ベッドに創の後頭部が見えて、ここに居てくれた事にまずは安堵した
ベッド横まで歩み寄り、小さな頭に触れると創はビクッと身体を跳ねさせていて、その反応に思わず手を離した
「…創…昨日 ごめん」
「……僕が」
「ん⁇」
創はゆっくりと此方に振り返ってくれたがその目を見て本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった
痛々しい程に赤く腫れ上がった瞼は、ずっと泣いていたのかを俺に教えてくれて、胸が張り裂けそうに痛んだ
「…僕が…悪いの……ごめんなさい」
「…いや…そんな事」
そこまで俺が言うと創の目からポロポロと涙が零れ始めた
「…佑吾…ごめんなさい…ごめんなさい…僕の事 嫌いにならないで⁇」
その姿を見た時 昨日言われた事が頭を過ぎった
『今だってあなたに見捨てられたら創は生きていけない
あの子に選択肢なんて最初から無いじゃないですか』
そうなのかな…
俺 創の事苦しめてるのかな…
そんな思いに駆られても、今 目の前で泣いている創がすごく愛しくてまた手を伸ばした
「嫌いになんてなれない…好きだよ…抱きしめても良い⁇」
俺の問い掛けに創は何度も頷いてくれて布団の上からキツく抱き締め、赤い瞼に何度もキスを落とした
「…佑吾」
「…キスしても良い⁇」
「…うん…僕もしたい」
そう囁いた創の色香に堪らず喉が鳴った
最初は啄む様なキスをしていたが、深く舌を絡めていくと服の中に手を入れたい衝動に駆られた
何とか堪えて唇を離し、柔らかい髪を撫でていると外から雀の鳴き声が聞こえてきた
「創…今日 学校休む⁇ 全然寝れなかっただろ⁇」
というのは建前で本当は俺が行って欲しくなかったんだ
あんな奴らがいる所に…
しかも発情期まで来ている
何かの手違いで創のあんな姿を誰かに見られるかもしれないなんて、想像しただけで頭がおかしくなりそうだ
だから今日だけは、此処で俺の帰りだけを待っていて欲しくて こんな卑怯な言い方をした
「…大丈夫…行く…」
しかし 創の返答は俺の期待したものではなく、ギュッと側にあったシーツを握った
「…そう」
痛々しい目元に触れ、真意を悟られない様に笑いかけた
「少し冷やそう 保冷剤持って来る」
「ありがとう…」
保冷剤と飲み物を持って創の部屋に戻り、先に水分を取ってもらった
その後また横にさせるとジェル状の保冷剤を目の上に乗せた
「気持ち良い…ありがとう…」
「…ん」
頭を撫でていると首が規則正しく動き出して このまま寝入ってくれたら、他の奴らの目に触れさせなくて済むのになと思った
我ながら大人気なくて笑えてくる
「俺 シャワー浴びて来るね」
「うん…」
風呂から上がると創はもう身なりを整えて俺の朝食を作ってくれていた
普段なら喜び以外感じないその光景に俺は初めて泣きたくなってしまった
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