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第217話 阿鼻叫喚
「創 おはよ!! 昨日あの後大丈夫だったか⁇」
「……うん」
佑吾に学校を休むか訊かれた時、本当はその言葉に甘えたかった
最初の頃の様に佑吾が帰って来る事だけを思って一日を過ごしたかった
でも健に余計な心配を掛けたく無かったし、折角通わせてもらっているのに簡単に休むなんて、そんな事絶対にしたくなかった
「健は弟さん大丈夫だった⁇」
「おう、もうめちゃくちゃ元気!!」
「良かった」
何とか笑顔を作ると自分の席に座って大きく息を吐き出した
寝不足と抑制剤の相乗効果で瞼が重い
「創、今日1時間目から移動だから行くぞ⁇
校庭で写生だって」
「あ…うん」
この暖かい日に外になんて出たら余計に眠くなりそう…
「どこで描いても良いって
なるべく日陰が良いよな⁇」
「うん、それだとすごく嬉しい」
「そしたらグランド横のベンチが木の下で良いかも」
健おすすめの場所に向かって歩いていると校庭のトラックの中に蓮さん達が見えた
「あ!! 会長達のクラス体育やってる」
「本当だ」
理央さんが僕達に気付いて手を振ってくれて、僕も小さく振り返した
「この辺花も多いし、ちゃちゃっと描いちゃおうぜ⁇」
「うん」
健とそばにあったベンチに座って目の前の景色をささっと描いてみた
花壇の奥にある校庭と校舎
僕の気持ちとは真逆の澄んだ青空
顔を上げなくても進んでいく僕の手の中を健が覗き込んで感嘆の声を上げた
「ヤバ!! 創 上手すぎ!!」
「ありがと
でも別に絵が上手い訳じゃないんだ
頭の中にある風景をそのまま写すから写真みたいに出来上がるだけで」
「ふ〜ん…どういう事⁇」
「あのね」
健に僕の記憶について説明しようとした時、何とも居心地の悪い視線を感じて思わず振り返った
「…え⁇」
そこで目に入ってきた人物が衝撃的過ぎて、手に持っていた鉛筆も膝に乗せていたスケッチブックも全てが地面に落ちていく
「うお!! どうした!? 大丈夫か!?」
健が拾ってくれているのにも気付かない程動揺していた
頭の中のフラッシュバックに動悸が上がり、目の前が湾曲して気持ち悪い
体も勝手に震えだし、それを何とか止めたくて両腕を握り締めても止まらず、涙までもがボタボタと流れ落ちていった
「…う…あ……やーーーーー!!」
其処に居たのはお母さんと一緒に暮らしていた男の人で、僕をあの場所に連れて行った張本人だった
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